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島のことは島で決めるー宇久島の未来をつくるプロジェクトー

レポート

今年度スタートした「宇久島の未来をつくるプロジェクト」。未来をつくるとはどういうことなのか、島や地方で生きるとはどういうことなのかといった、プロジェクトの根幹に関わる課題を深めるためのワークショップ兼第3回編集会議を6月7日に実施しました。

嫌なこと、改善したいこと、変えたいこと

今回のワークショップでは宇久島の未来をつくるにあたっての課題についてみんなで考えました。
講師は編集者の熊本鷹一さんです。熊本さんは雑誌『島へ。』のほかにも経済誌(月刊『コロンブス』)の編集を手掛けていることから、地方経済の事情にも詳しいです。熊本さんには、宇久島の課題を考えるにあたって各地の事例を挙げながらワークショップをファシリテーションしてもらいます。

まずは「宇久島に住んでいて嫌なこと、改善したいこと、変えたいこと」について聞きます。

高校生たちからは「遊ぶところがない」、「通信販売を利用すると荷物が届くのが遅い」という声があがりました。
物流については、荷物を船で運ぶ離島特有の事情があります。自動車のみの輸送よりも時間がかかるだけでなく、本土と離島を結ぶ船は、悪天候によって欠航になったり、修理のためにドックに入ることによって欠便が発生したりします。
ちなみに、宇久島へ行くための海路は博多港からと佐世保港からの2つのルートがあります。佐世保港からその日の朝に出航した船で宇久に到着した場合、用件を済ませて夕方になると佐世保に帰る便はもうありません。宇久島への日帰りは難しいことから、時間がかかる用事がある人はたいてい宿泊する必要があります。

次に「宇久島の未来を考えた時に不安に思うこと、感じること」について聞きました。すると、「人口が減って宇久島は無人島になってしまうんじゃないか」、「イノシシのほうが人より多くなってしまうんじゃないか」といった発言がありました。

宇久島では島外への人の流出が止まらず、最大約11,000人だった人口が現在は約2,000人となり、近年は毎年100人近くが減少しています。このまま島から人がいなくなったとき、自分たちのふるさとはどうなってしまうのかという不安の声が聞かれました。

その上で「未来の宇久島に残していきたいこと」について聞きました。ほぼ全てのメンバーがあげたのが、自然、海、人のあたたかさです。

宇久島で生まれ育った高校生たちのほとんどは、卒業後に島外へ進学・就職します。一時は島を離れて暮らし、また島へ帰ってくる人もいれば、そのまま島外での生活を続け、帰省以外の目的では帰らない人もいます。
島外へ出たのちに宇久島に戻ってきても、自分たちが好きだった「宇久島」のままであってほしい。高校生たちの意見にはそのような願いが込められているような気がしました。


賛成派も反対派も宇久島のことを考えている

ところで、現在宇久島では、通称メガソーラー事業という土地面積約720ヘクタールを利用して太陽光発電をおこなう大型民間事業計画が進んでいます。島外から作業労働者が1,000人規模で流入する見込みとなっています。
メガソーラー事業について話を聞いてみると、賛成派と反対派が同数。両者それぞれの意見がありました。賛成意見としては、「人口が増えることで島が活性化する」、「人口減少を食い止めるためには多少景観が変わってもやむをえないと思う」といった発言。反対意見としては「せっかくの綺麗な景観がなくなってしまう」「治安が悪化することになるのでは」、「人口が増えて島が潤うのは一時的なものなので観光客を増やすための方策を考えた方がよい」といった発言。

ここで、熊本さんは、沖縄県竹富島の事例(※)を紹介しました。

竹富島の事例を引き合いに出して強調するのは、「島のことは島で決める」という自治のあり方についてです。
宇久島は、かつては隣の寺島とともに宇久町という地方自治体を形成していましたが、2006年に長崎県北部の佐世保市と合併しました。宇久島のことを決める市町村議会は佐世保市議会です。
竹富島は西表島など他の島々とともに竹富町を形成しており、竹富町議会で島のことを決めます。町役場も竹富島にあるわけではありません。しかし、住民自治組織の竹富公民館を中心に島のことをできるだけ島民で決める仕組みを築き、本土の資本による土地の買い占めや開発という課題に対して取り組んできました。

宇久島で「島のことは島で決める」ようにするにはどうしたらいいのでしょうか。
まずは島のこれからの姿について考え続けること、島のために何かをするための仲間をつくることから始めるのがいいかもしれません。

最近になって宇久島では、畜産業に従事したり、若い人が島内でパン屋を開業しようとしたりと、島外から戻ってきて何かを始めようという機運が徐々に高まっているようです。賛成派も反対派も共通しているのは、宇久島のことを大事にしたいという思いです。これを機に若い人々が島のことを考え、新しい動きを生み出し、地域を盛り上げていくことを期待したいと思います。


取材の依頼をする

授業の後半では、第3回編集会議をおこない、各記事のテーマとその担当者を決めました。
初回の編集会議から取り上げたいという声が多かった海や自然のほか、宇久島の文化や歴史に関するテーマとして、かんころもち、鯨文化、神楽を加えました。

海や自然についてはインスタ映えする宇久島のスポットとして紹介したいというメンバーからの提案を採用し、見せ方に工夫を加えたページにすることになりました。

取材先の選定は、宇久島観光協会事務局長の檜垣督さんに協力をいただきました。
「宇久島の鯨のことを取材をしたいんですけど」
「それならあの先生かな。宇久の歴史や文化について詳しい人だよ」

その場で電話をかけて、アポイントメントをとります。

取材先が決まったら、取材内容や聞きたいことを各自検討します。
次回は、取材の様子をレポートします。


※ 竹富島では、1971年前後以来の本土資本による開発や土地買占めに反対する島民の意思を反映して、竹富島憲章という島の文化・景観を守るための5原則(「売らない」「汚さない」「乱さない」「壊さない」「生かす」)を中心としたルールを1986年に制定しました。

CREDIT

取材・文
北 悟