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海に親しみ、地域を知るー海洋教育こどもサミットin東北(後編)

レポート

2016年11月25日に気仙沼市立面瀬小学校で行われた「海洋教育こどもサミットin東北」の前編レポートに引き続き、後編では児童生徒たちがサミット全体やポスター・セッションを振り返り、意見交流を行う様子をお伝えします。

 

それぞれに思い、考えたこと

まず、児童生徒たちは小学校、中学校、高校ごとにグループに分かれ、ポスター・セッションの感想や、海洋教育の魅力、「海と生きる」ための考えなどについて言葉を交わしました。話し合いを進行し、グループメンバーの言葉のやりとりを整理していくファシリテーターは児童生徒が、ファシリテーションの補佐役は各校の先生がつとめます。児童生徒たちは、どんなことを思い、考えたのでしょうか。

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こちらは、気仙沼市立階上小学校と岩手県洋野町立宿戸小学校、角浜小学校のグループです。見慣れない顔ぶれで車座になり、児童たちはすこし緊張した様子。しかし、階上小の遠藤宏紀先生が一人ひとりに感想を聞いていくと、児童からは「自分の知らなかったことがわかったのでよかったです」「ほかの小学校の発表をしっかり聞けて、ほかの小学校の(取り組みの)おもしろさを知ることができたのでよかったです」といった言葉が。また、海洋教育の魅力については、「自分の(地域の)海のことを深く理解できる」「海のことを調べるときに、その地域の人との交流も一緒にできるところがいいと思います」という意見がありました。

ほかにも、ウニの生育環境を守るために、山に樹を植えて滋養のある水分を海に送る活動として、宿戸小学校の児童が参加している「ウニの森づくり植樹祭」と、気仙沼市唐桑町で行われている「森は海の恋人運動」を挙げ、別の地域の活動との共通点を見出す場面も。

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気仙沼市立面瀬小学校、洋野町立中野小学校、林郷小学校、大野小学校のグループです。

こちらも児童たちは緊張した面持ちですが、一人ひとりの言葉に耳を傾ける姿勢が見られます。感想には「気仙沼にはあって洋野町にはないものとか、洋野町にはあって気仙沼にはないものとか、どっちにもあるものとか、共通点や違いを見つけることで、どちらの町にもいいところがあるのが詳しくわかってよかったと思います」といった発言が。ほかの地域と比較することで、より多角的に身近な海を見つめ直す様子が窺えます。

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気仙沼市立唐桑中学校、大谷中学校、洋野町立中野中学校のグループです。

セッションの感想について、生徒からは「それぞれの地域によって、海の中の様子や有名なものが違うので、おもしろいなと思いました」といった言葉が出てきました。

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そして、気仙沼高校、岩手県立種市高校、山形県立加茂水産高校のグループ。

積極的なファシリテーションがなされ、生徒からは「小学校のときから自然と触れ合えるのは、すごくいいことだなと思いました。授業の一環として、自然と関わったり研究したりするのは探求型でおもしろいと思うし、将来、こういう授業をやっていたから、『漁師になりたいって思ったんだ』とか、そういう人が出てくれば、海洋教育はいいものになるんじゃないかなと思いました」という海洋教育を俯瞰するような感想などが聞かれました。

また、話し合いは“「海と生きる」ために必要なこと”という話題へ展開。ある生徒は、「海の知識を、基礎でもいいので知っていたら、勉強もより高度なものに変えていけるんじゃないかと思います」と話しました。自身の学びの中で培われた目的意識や感性が、言葉の中に表れているように感じられます。


振り返ることで得た気づき

次に、各グループで話し合ったことを、代表の児童生徒たちが会場の参加者へ向けて発表しました。まずは小学生のグループから。

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代表児童からは、「海の勉強から、自分たちの町を知ることができる」「中野ではウニ養殖がされているのに、気仙沼ではカキ養殖がされていて、地域によって養殖の種類が違う」といった意見が出てきたと語られました。また、ポスター・セッションで洋野町立中野小の児童が発表した南部ダイバーの仕事についての個人研究に対し、「昔の人が着ていたダイバーの服は50kg以上あるということを初めて知って驚きました」といった感想も。

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続いて、中学生のグループです。

カキやホタテの養殖体験、地元の環境調査や防災活動、名産品の製品加工・販売など、地域と連携した学習活動を発表していた中学生。話し合いでは、海洋教育の魅力や「海と生きる」ための考えについての意見として、「海洋教育を通して、地元の良さを学ぶことができた」「『海と生きる』ためには、地域とのつながりが特に必要だと思いました」といった意見が挙がったそう。代表生徒は、「自分たちで海の魅力をアピールして、これから海と生きていきたいと思います」と話しました。

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最後に、高校生のグループ。

授業でのより専門的な実習・研究のほか、地域の子どもたちや国内外の海洋教育実践校との学習交流なども行っている高校生からは、「どちらの高校も、学校の外で活動するのが、例えば水族館と連携したり、小学生に向けて本を和訳、英訳したりしているところがすごいなと思いました。自分も行動に起こすことを大事にしたいと思いました」「自分が知らないことを知ることもできたし、これからの私たちの活動に展開していけるようなこともわかったので、とてもいい機会になりました」といった感想がありました。


海のことをよく知り、海とともに生きる

児童生徒たちの振り返りを受けて、東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センタープログラム長の茅根創教授から、今回のサミットの総括が行われました。

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はじめに、茅野教授はポスター・セッションについて、「みなさんが自分で調べたこと、体験したことを、文章だけではなく絵や写真、ビデオや模型、あるいは実物のホタテ貝やウニ、それから潜水器具などを使って発表しようという一所懸命な内容で、とてもわかりやすかったです。どれも素晴らしい内容だったと思います」とコメント。

セッションでは、どの学校も発表の資料に力を入れていました。たとえば、中野小の児童は、南部ダイバーの実物のヘルメットや潜水靴を発表の資料として持参。その重さや大きさ、質感や作りなどを実際に触ってもらいながら見せていたのが印象的でした。ほかにも、気仙沼市立大島小が養殖ワカメの種付け時、刈り取り時の実物大の絵を、唐桑小がカキ養殖のいかだの模型を発表の資料に用いるなど、興味を持ったことをわかりやすく、楽しく伝えるための工夫が各校の発表から感じられました。

次に、児童生徒たちが海について学んだことを通じて、地域の特色、地域に住む人々の仕事や生活、他の地域との関係など様々なことに興味を示し、お互いに議論や質疑を交わしていたことを評価。茅根教授は、地球温暖化や水質汚染などの環境破壊により日本の海が危機的な状況にあること、また、都会では人々の生活が海から切り離され、その危機への実感や理解が得にくいことへの懸念についても触れながら、「海のことをよく知り、海とともに生きる。そういったことを考えてくださる若い人たちがこれだけいて、これから期待ができると思っています」と話しました。

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そして、サミットの締めくくりとして、気仙沼市立唐桑中学校の代表生徒からあいさつがありました。生徒は、海洋教育を継続していくことが自身の未来、地域の発展へとつながると主張し、次のように話しました。「今日の発表と交流は、“海に親しみ、海を知り、海を守り、海を利用する”学習をすることが、地域理解を深めたり、地域文化を豊かにしたりすることにもつながっているということを、湾岸部で暮らすわたしたちに教えてくれました。また、人と関わることの大切さを知ることができ、私たちの生き方についても考えることができました」。

風土や地域性の異なるそれぞれの環境の中で、独自の視点や技術を活かしながら海の学びに取り組んでいる児童生徒たち。お互いの学習活動に触れ、興味を持ったこと、思ったことについて言葉を交わすことで、学びをより深められる機会となったようです。


閉会後、気仙沼高校の生徒に話を聞かせてもらいました。

「今後、自分たちの活動や地域について考えるときに、こうしたいと思ったことはありますか?」と質問すると、生徒はこう答えてくれました。「今でも、(サミットの)タイトルどおり、海とは生きられていると思うんです。でも、さらに、もっとよりよい状態での共存をはかることができるなって思いました」。

他校の児童生徒たちとの交流から刺激を受け、「海と生きる」ためにできることを模索しようとする意欲的な姿勢を感じることができました。

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CREDIT

取材・文
鈴木瑠理子