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「生活」そのものの魅力ー気仙沼・大島の未来を探るプロジェクト

レポート

今年度よりスタートした「気仙沼・大島の未来を探るプロジェクト」ですが、未来を作るとはどういうことなのか、島や地方で生きるとはどういうことなのかといった、プロジェクトの根幹に関わる課題を深めるために、7月23日(日)に『島へ。』の編集長による講演会を開催しました。第2回編集会議と合わせてレポートします。

第1回編集会議についてはこちらを参照ください。レポート1「島にだけある魅力とは?」 レポート2「大島の何を残したいか

東方通信社・海風舎の編集長である古川猛さんは、離島や地域の振興に長年携わっています。古川さんの経験とそこからくるビジョンにふれることは、今回のプロジェクトを展開していくうえで、またプロジェクトに関わらず気仙沼・大島の未来を考えていくうえで意義あるものになるとの考えのもと、講演会を開催することにしました。

講演会には、プロジェクトの主役である高校生にくわえ、域の住民の方や教育関係者、報道関係者が参加しました。

講演タイトルは、「島づくり・まちづくり−離島架橋による経済効果」です。経済の仕組みについての基本的な確認から始まり、地域や離島が置かれている現状について、実例を交えながら話されました。古川さんによれば、人口減少や少子高齢化、限界集落といった日本が抱えている問題は、島において先鋭化するとのことです。ほとんどの島がそれらの問題に直面しながら、島特有の問題をも抱えています。

現状を確認したのちに、離島に架橋されることのメリットとデメリットが示されました。メリットとしては、生活圏が広域化し、通勤や通学の利便性が向上することや商業圏が拡大すること、海産物の輸送による漁業関連の機能向上といった、モビリティ(移動)の向上があげられました。介護サービスや重症患者の搬送などは生存率の向上に結びつくため、大きなメリットとなります。デメリットとしては、ストロー現象による人口減、地域コミュニティの低下、犯罪発生率の増加、自動車増加に伴う事故の増加、島外志向の高まりによる波及的な影響があげられました。

古川さんは、離島架橋に伴うメリットとデメリットの可能性を知っておくことは必要だが、その上で架橋後にどのようにまちをつくっていくかを考えることがより大事であると語りました。その際にキーワードとなるのが「生活観光」です。生活観光とは、生活や暮らしそのものの中に織り込まれている魅力を発掘・再発見し、観光資源化するという考えです。

この「生活観光」という考えは、気仙沼・大島の未来を考えていく上で重要なものとなりそうです。

講演会ののちには、第二回編集会議を行いました。記事として取り上げるテーマを決めていくために、生活観光という考えを念頭に置きながら、あらためて大島の魅力とは何かをあげていきました。

一人ずつ、自身が取り上げたいテーマを発表していきます。そう言えばあんなのもあった、よく考えるとこのことについて知らない、ずっと不思議だったんだけどあれは何だろう、あの人に話を聞いてみたい。そんなことを言い合いながら、参加していた大人たちにも意見を聞きながら、少しずつテーマがしぼられていきます。

熊本さんからは、普段生活していて「あたりまえ」のもののなかにこそ、大島の魅力があるかもしれないとの話がありました。「あたりまえ」のものを、意識化するためには、一度、外から見てみなければいけませんが、雑誌を作っていく上ではそれが大事であると。

熊本さんの話を受けながら、古川さんは、「橋がかかることで生活が便利になると思うか?」という問いを高校生に投げました。高校生たちはすぐに回答することができません。それに対し、古川さんは国内外のいくつかの事例を示しながら、その問いを考えていく視点を示してくれました。高校生は、少しずつ、便利になるだろうこと、不便になるだろうことをあげていきました。

例えば、島内に車での観光客が増えると事故が増えるから不便になりそうだなどの意見があがりました。観光客が増えるのはいいけども、事故の増加やゴミの増加、コンビニができて小売店が潰れてしまうなどの影響もありそうだ、と。古川さんは、そのような影響は確かにあるだろうことを示しつつ、それに対してみんなはどうする?とさらなる問いを出します。この「問い」に対してどう対峙していくのか。それこそが、大島の未来を考えていくうえでの肝になります。

古川さんは、「独立国・大島」や「大島憲法」などといったワードを用いながら、大島の自治を考えること、みんなで合意形成を図っていくことが大事だと、高校生に語りました。そのためにも、まちと自分との関わりを見いだすことが第一だと。

それにて、第二回編集会議が終わりました。


翌日にはいよいよテーマを選定し、取材をしたい方々へのアポイント取りをしました。アポイント取りの結果については次回レポートします。


本プロジェクトは日本財団の助成により実施している事業です。

CREDIT

文・写真
田口 康大