連載

長崎県|長崎県立宇久高等学校

島をどう伝えるか【宇久島の未来をつくるプロジェクトvol.4】

2018.11.05

学校地域探究学習海洋教育

日本唯一の島マガジン『島へ。』を出版する海風舎との共同プロジェクトにおける第2回ワークショップ兼編集会議の様子を、「島をどう見せるかを考える(前編)」に引き続きレポートいたします。

かたちの意図を説明する

出来上がったラフレイアウトを示しながら、宇久島の何をどう見せるかを発表します。主催者側が用意した写真素材はパターンに限りがあるので、レイアウト上のかたちと説明してくれた構想は必ずしも一致しません。一致しないところは口頭とメモ書きで説明を加えていきます。

まずは、平家盛が宇久島に落ちのびてきた際に上陸したという舟隠しの写真をベースにしたレイアウトです。周囲にウミガメや魚の写真を配置しています。宇久島の海の情報を豊富に散りばめています。
「宇久島のこの情報を伝えたいという想いをどんどん出してもらっていいよ。想いが強すぎて読者に伝わらなそうなときはこちらで削っていきます。それが編集者とデザイナーの仕事なのでね。囲み記事にするとか、情報整理のための手法はこれからできるだけ示していきます。」
伝えたいことが伝わるようにこれからどのような工夫が重ねられていくのか楽しみです。

こちらは宇久島の海についての写真を上部に、海の美しさについての文章を下部に置いたレイアウト。海をテーマに色んな要素を並べるレイアウトは商業誌でも見かけます。吉村さんからは、「最近は長い文章を読むのが苦手な読者も多いから、写真やテキスト素材の分量のバランスを調整しながら、レイアウトを仕上げていけるといいね」とコメントがありました。

こちらのレイアウトは、宇久島でおこなわれている牛の放牧の写真をベースにしています。空の写真には、授業で取り組んでいるドローンにて撮影したものを用いるようです。宇久島の自然を感じてもらうためにインパクトを与えたいという意図を説明してくれました。

素材が丁寧に配置されたレイアウト。自分が見せたいものとその見せ方とがシンプルでわかりやすい形になっています。自分の構想をどれくらいの分量のテキストをもって表現するかは、今後の取材を経てからまた変わってくるかもしれません。

片側には海のイメージカットを、もう片側にはさまざまな海の要素を配置したレイアウトです。それぞれ遠くから見た海、近くから見た海という視点の違いがあります。商業誌でもよく見る手法で、普段から雑誌というメディアに馴染みがありそうだなと感じます。
吉村さんからは「テキストをどう展開するのかが悩みどころだね。写真にキャプションを付ける手法なんかがいいかもしれないな」というコメントがありました。

釣りが趣味のメンバーは宇久島の魚をテーマにしました。釣りのポイントマップを示しながら、釣りに詳しい方の顔写真と解説が合わさったレイアウトです。釣り好きならではのこだわりが発揮されていました。

「みんな予想以上に誌面を意識してつくれていたと思います。今回のレイアウトをもとに自分の構想を洗練させていってください。その際、自分が伝えたいことを表現するためにはどれくらいの文字数が必要か、どんな写真を使えばいいのかを考えて、レイアウトを繰り返してみてください。どうやったら読んだ人に伝わるかを工夫して形にしていくことがよりよいデザインにつながります。」
編集出版に携わる人は、情報を相手に伝える工夫をすることで、よきデザインの追究をしています。
「自分の想いを構想したらそれをどんどん形に仕上げていってください。僕たちはそれを陰ながらお手伝いします。」
主催者である私たちは、高校生たちが企画に取り組む中で生まれた想いをできるだけ完成した雑誌に保存させたいと考えています。昨今、教育現場においては、生徒がさほど主体的に取組んだわけでないにもかかわらず、デザイナーによって飾り付けられ見栄えがよくなった完成品だけが残る、ということが散見されます。
そのような事態を避けるため、デザイナーと編集者、3710Labのそれぞれの考えを伝え合いすり合わせながら、ワークショップを形作っています。これから吉村さんと生徒たちは、今回つくったレイアウトを媒介に、東京と宇久島の間でコミュニケーションを積み重ねていきます。


高校生が取り組む地域活性化プロジェクト

宇久高校は、「UkuLabo」という地域活性化プロジェクトを実施しています。昨年度、地元の食材を使った商品開発として、宇久島で獲れるレンコダイとガゼウニを使った魚醤が出来上がりました。レンコダイは、特産の鯛めしの作成過程で不要となる部位を使います。ガンガゼは、棘が鋭いウニで海藻を傷つけるために駆除されていますので、それらを使います。宇久島では過去にガンガゼを使用して魚醤作りに挑戦していたそうですが、発酵がうまくいかず完成まで至らなかった経緯があります。
そこで、宇久高校では、この1度失敗に終わってしまった魚醤作りに取り組むことにしました。魚醤作りに取り組んだメンバーは、この昨年の活動をテーマに記事をつくります。

『島へ。』編集部の熊本鷹一さんによる編集会議の開始です。
「魚醤というテーマをどう見せていくかが問題だね。見せ方を考えたうえで何を伝えたいかを考えよう。作業で何が一番大変だった?」
「攪拌作業が大変だった。」
「どういうところが大変だった?」
「臭かった。手ににおいが残って他の人からも一日中嫌がられた。」
「においは伝わりにくい。でも大変な作業を頑張って作ったという情報を入れると伝わりやすくなるかもね。手前味噌だとしても作業を頑張ったと宣言していこう。僕は経験してないので言えないからね。」
頑張って攪拌している様子の写真、ガンガゼの写真、醤油瓶の写真を使うことになりました。
醤油瓶の写真は次回に物撮りします。
「仕上がりはどうだった?」
「レンコダイのほうが美味しかった。」
「どう美味しかったかを伝えられるようにできるといいかな。ただ、魚醤の味を伝えるのは難しいかもしれないので特徴で伝えたほうがいいかもね。」

編集会議の結果、UkuLaboページを担当する4人はUkuLaboについて、魚醤、作成手順、魚醤を使ったレシピの4つに分担して執筆することになりました。

次回は、企画タイトルでもある”宇久島の未来をつくる”ために、宇久島の課題について考えるワークショップです。

取材・文:
北 悟