AKI INOMATAのフィールドノート③ ー仙台うみの杜水族館<後編>ー

2016.03.22

生きものとの恊働作業によって作品制作をおこなうアーティストAKI INOMATAによるレポート第3弾。 仙台うみの杜水族館でおこなった展示を振り返ります。<後編>

オホーツクヤドカリにやどをわたしてみる

オホーツクホンヤドカリと私のつくった「やど」をプラケースに入れて様子を見る。

待つこと20分。思ったよりも早くその時は来た。

引越しをした。

サイズもちょうどピッタリのようだ。

透明なヤドに引っ越したオホーツクホンヤドカリ

そうこうしている間に、飼育員さんたちが、着々と準備を進めてくれていた。

まずは、ヤドカリと水槽の設備一式をバックヤードから移動する。

海水を注水。

バクテリアのついた黒い砂をいれ、濾過機、水温を一定に保つクーラー、照明を設置。

ヤドカリを入れて、水槽の裏側に黒色のシートを張る。

完成だ。

水槽のセッティングを行う飼育員さんの前田さんと阿部さん

新しい環境に落ち着かないのか、そわそわとしているヤドカリたち。

しばらく見ていると、2匹が喧嘩をはじめてしまった。

「こういう時は隠れ家を入れて、様子を見てみよう」 と、飼育員の萬さんの発案で、隠れ家用の黒い大きな石をバックヤードから持ってきてもらう。

石をいれると、そのこちら側と、あちら側で、それぞれ縄張りを確保したようで、喧嘩はおさまった。さすがだ。

この時点で、21時。

飼育員さんたちは、みな残って、作業があるようだ。

私は、設営を終えた安堵とともに、少しひっそりとした夜の水族館を、一足先に失礼することにした。


公開初日

公開初日の仙台うみの杜水族館へ。

公開初日の11/1の朝の様子

アイット・ベン・ハドゥをモチーフとした「やど」を背負うオホーツクホンヤドカリ

展示中のオホーツクホンヤドカリ

今回、生体を展示したのは、仙台うみの杜水族館の2階。「世界のうみ」ゾーンの手前にある「つながりギャラリー」という場所だ。

2015年7月1日にオープンした仙台うみの杜水族館のコンセプトは、「海と人、水と人との新しいつながりを『うみだす』水族館」。

東日本大震災後、日本は世界各国から沢山の支援と協力をいただいた。その思いを大切にすべく、「つながりギャラリー」には、仙台の友好都市8都市の市長、5か国の大使館大使から寄せられたメッセージが展示されている。

「やどかりの『やど』を通し、世界とのつながりを感じてもらえるような展示にしたい」という、仙台うみの杜水族館の意向で、今回、この場所で展示することになった。

展示水槽の前で

無事に初日を迎え、ヤドカリたちの世話を、仙台うみの杜水族館のスタッフに託し、仙台を後にすることにする。

初の水族館での展示。海の生きものの飼育のプロがいることが、何より心強い。

次回は、より水族館側とのコラボレーションのようなことが出来るよう、新作のプランを考えながら、東京に戻った。

※その後、本展示は、テレビ番組「ミヤギテレビ(日テレ系列)News every (みやぎ版)」11/4放送 や新聞「河北新報」11/23(27面)に掲載されました。

仙台うみの杜水族館


PROFILE/AKI INOMATA
1983年、東京生まれ。東京藝術大学大学院 先端芸術表現専攻修了。生き物のふるまいを作品コンセプトに 取り込み、主な個展に、「犬の毛を私がまとい、私の髪を犬がまとう」(HAGISO/東京/2014)、「Inter- Nature Communication」(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]/東京/2015)、主なグルー プ展に「フランス大使館旧庁舎解体前プロジェクト No Man’s Land」(旧在日フランス大使館/東京/2009) など。2014年、YouFab Global Creative Awards 2014 グランプリ受賞。
http://www.aki-inomata.com/

取材・文:
AKI INOMATA