レポート

宮城県|気仙沼市立鹿折小学校

海はなぜあふれない?

2016.03.01

学校地域海洋教育

コップに水を注ぎ続けると、一体どうなるでしょう?当然、いっぱいになってこぼれてしまいます。しかし、海はあふれません。川の流入や雨によって水が日々加えられているにもかかわらず、海があふれないのはなぜなのでしょうか。今回は、気仙沼市立鹿折小学校の生徒たちと一緒に、海があふれない理由を予想し、それを証明するにはどのような実験を行えばいいのか考えました。

目に見えない海の様子

今回授業を行ったのは、4年生の小山淳先生のクラス。はじめに先生が「海はどこにありますか?」と質問すると、生徒たちは一斉に「こっちー!」と窓の外の気仙沼港の方角を指差します。鹿折小学校は港から少し離れていますが、近くには海へと続く鹿折川が流れ、生徒たちにとって海は身近な場所。小山先生は、重ねて「海はいつもどんな様子ですか?」と尋ねます。すると、生徒たちからは「青い」「雨の日は黒っぽい」「少し揺れている」という返答が。では、色や動きといった目に見える様子以外にはどうでしょう?ここで、先生がこんな質問を投げかけます。「川などから水が流れ込んでいるにもかかわらず、どうして海はあふれないのでしょうか?」


海は蒸発する?

小山先生からの問いかけに、生徒たちは「海が蒸発しているから」「海の大きさが、あふれないほどに広いから」「海の中の生物がちょっとずつ水を飲んでいるから」と答えました。ここでは、海があふれない理由としてすぐに確かめられそうな「海が蒸発している」に着目し、実際に蒸発するかどうか、みんなで予想を立ててみます。
まず、「蒸発する」と予想した生徒たちの考えを聞いてみます。すると、「水道水も蒸発するから、海水も蒸発する」「寒い日に海から湯気が出ているのを見たから」といった発言がありました。
次に、「蒸発しない」と予想した生徒たちの考えを聞くと、「波で外に水を押し出していると思うから」「毎日蒸発したら水がなくなってしまうから」という声が。さて、海は蒸発するのでしょうか?


実験方法を考え、確かめる

ここからはグループになって、海水が蒸発するかどうか確かめるための実験方法を考えました。生徒たちは「水と塩をよくかきまぜたものをベランダに置く」「ビーカーを使って」「2日間くらい待ってから見る」……などと意見を出し合いながら、どのようにすれば結果が確かめられるか探っていきます。

そして、それぞれのグループが考え出した実験方法を発表!
あるグループは、「ビーカーに水と塩を入れてラップをし、ベランダに置いて観察する」と提案。また、「ビーカーに塩と水を入れてかき混ぜ、水面の位置に印をつけてベランダに4日くらい置く」と考えたグループも。どちらも海水を塩と水で代用し、屋外に置くという案ですが、ラップをする、印を付けるというところに違いがあります。けれども、海水にはどのくらいの塩が含まれているのでしょう?そもそも私たちの食卓にのぼる塩と海の塩は、同じ性質のものなのでしょうか?それに海水には塩分しかないのでしょうか?これらについても考える必要がありそうです。
ほかにも、「水槽に海水を入れ、日光が当たる場所で2,3日置く」「ビーカーに海水を入れ、アルコールランプで熱する」など、海水を使う案でもさまざまな方法が出てきました。


「はっきり分かる」「すぐできる」「だれでも」

発表を踏まえて、今度は「はっきり分かる」「すぐできる」「だれでも」をキーワードに、行いやすい実験方法を選びます。すると、生徒たちはそれぞれの方法から共通する部分を抜き出しながら、目印のついたビーカーと海水を使い、様子を見るという方法を思いつきます。

ここで、小山先生が教壇の下からバケツを取り出しました。なんと中には気仙沼港の海水が!生徒たちからは「おー!」「臭い…」「うわー!」といった声が挙がります。そして、みんなで赤い線の目印がついたビーカーに海水を注いで……

いざ、それぞれのグループで決めた場所にビーカーを置きにいきます。
目に見えない海の姿を確かめる実験方法を考え出した生徒たち。結果がどのようになったのかは数日後のお楽しみです。
また、今回実験には至りませんでしたが、海はどうしてあふれないのか?という問いかけに対し、「海があふれないほどに広いから」「海の生物がちょっとずつ水を飲んでいるから」と答えた生徒の考えも興味深い着眼点です。一体どのようにすればこれらを検証できるのか、そして結果はどうなるのか。みなさんもぜひ考えてみてください。

取材:
田口康大
文:
鈴木瑠理子