みなとラボ通信

海のほんだな vol.1

広島 蔦屋書店・文学コンシェルジュ/江藤宏樹

2025.07.21

江藤宏樹(広島 蔦屋書店・文学コンシェルジュ)

文学コンシェルジュとして広島 蔦屋書店に勤務しております。特技は広島発祥のけん玉です。穏やかな瀬戸内での釣りも趣味としています。広島といえばの牡蠣も大好物です!

広島 蔦屋書店(広島県広島市西区扇2丁目1-45)
営業時間:8:00〜21:30(2階は10:00〜21:00)/ 定休日:年中無休
https://store.tsite.jp/hiroshima/

子どもに読んでもらいたい「海」に関する本

『火守』劉慈欣 著/池澤春菜 訳/西村ツチカ 絵(KADOKAWA)

主人公のサシャは世界の果ての東の孤島にたどり着きます。この島には火守というおじいさんがいます。おじいさんは毎日違った時間に火をつける仕事をしています。サシャの恋人のヒオリは病気です。その病気を治せるのは、火守のおじいさんだけなのです。サシャはヒオリを助けるためにおじいさんとある約束をします。それからながい時間をかけてふたりは準備をします。海へ出ていき、ロケットを作って月にロープを引っ掛けて、月に登って月の舟でヒオリの病気を治すため星の海へと航海にでかけます。サシャがおじいさんと交わした約束とは。ヒオリはどうなったのか。東の果てで火守は何に火をつける仕事をしているのか。ぜひ本を読んで知ってください。

SF好きな私にとっての「海」の1冊

『ソラリス』スタニスワフ・レム 著/沼野充義 訳(ハヤカワ文庫SF)

海と聞くと、SF好きは、スタニスワフ・レムの『ソラリス』を思い浮かべてしまうはず。人類が宇宙で未知の生命体と遭遇するファーストコンタクトものなのですが、この小説は一味違います。出会うのはわかりやすい宇宙人ではなく、生きているのかよくわからないがおそらく生命体であろう海なのです。惑星ソラリスは2つの太陽をもち、表面は海で覆われています。その海に浮かぶ調査ステーションが舞台となる小説。サスペンスであり、ミステリーであり、そしてラブロマンスでもあるこの作品。人はなにか未知のものに出会った時に人の物差しでそれを理解しようとするが、それがまさしく傲慢なのであるということを解らせてくれる一冊でもあったように感じられました。

あなたを「海」へと誘う1冊

『星籠の海』上下巻 島田荘司(講談社文庫)

瀬戸内海が時計仕掛けの海である、ということはご存知ですか。海流が複雑に絡み合う瀬戸内海は非常に独特な海です。いにしえからの港町である鞆を舞台にしたミステリー小説ですが、殺人事件の謎というよりも、瀬戸内の海を制した水軍も絡んでくる壮大な歴史ロマンを解き明かすという側面が強いこの小説。時計仕掛けの海の謎、さらに小説のタイトルにもなっている「星籠」とは。すべての謎は絡み合い、ある一点に向けて突き進んで行き、大きな奇跡を呼び起こすのです。ミステリーの面白さもさることながら、舞台となる瀬戸内海、特に潮待ちの港と言われた福山市鞆の浦の美しさが印象に残ります。読み終わった後には鞆の浦から海を眺めたくなること間違いありません。

文学コンシェルジュにとって「海」の思い入れがある1冊

『潮騒』三島由紀夫(新潮文庫)

島で暮らす男女を描写する中で、海の優しさ、厳しさ、包容力、そして、海こそが帰るべき大切な場所であると感じさせられる名著。島で育てられた逞しい若者新治は、島の金持ちで権力者の照吉爺の娘初江に淡い恋心を抱く。二人がお互いを意識し始めて、それが両想いの恋に発展するまで、島も海も優しく時には厳しく見守る。そんなふたりは嵐の日、廃墟で焚き火越しに瑞々しい身体をさらけ出すも純愛を貫く。しかし、照吉はふたりを認めてはくれない。会えなくなったふたりはどうなるのか。新治を自らの船の船員とする照吉の真意は。島と海と若者というモチーフに、三島はどのような想いを込めたのか。目が覚めるほどの美しい純愛小説。