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みんなで考え、話し合う“海”のこと。ポッドキャスト番組「3710ーク」スタート

2023.11.17

「3710ーク(ミナトーク)」とは?

「海」を色々な角度から考え、それを身近な人と対話しながら共有していくことも大切なのではないか。という思いから、みなとラボのポッドキャスト番組「3710ーク(ミナトーク)」をはじめました。Vol.0「最近考えた海のこと」は、こちらからぜひお聴きください。

ポッドキャストの先駆けとして、2023年某日、みなとラボスタッフは「海」と「デザイン」、そしてあらためて私たち「みなとラボ」が何をすべきなのか、考え話し合う時間を持ちました。今回はその話し合いの記録を「3710ーク」Vol.0-0としてまとめました。大きすぎてわからない「海」との共生を、どのように目指していけばいいのか。話し合うことで見えてくることがたくさんありました。

こちらの記事は期間限定で公開します。ポッドキャスト番組「3710ーク」の配信情報は、今後メルマガでお知らせしますので、みなとラボ公式サイトのトップページ下からぜひ登録をお願いします。

なぜ海とデザイン?

スタッフS:みなとラボの活動自体が、「海のことを伝える」というのが大きい目的に1つである。そのために、なぜデザインが有用なのかを人に伝える必要があるから、やっぱりビジュアルや表現みたいなもので伝えることが大切だと思う。

スタッフT:みなとラボの1つの役割として海を伝えることはあるけど、自分たちは海の専門家ではない。だから、海の専門家や海に向き合っている人たちとつながって、その人が見ている海を伝えていくことは役割としてはあるけども、それが一義的ではないかなとは思う。
その伝えていく部分にデザインを入れていくというのは大事だけど、デザインをその役割だけに限定してしまうのはどうなんだろうか。すでに伝えるものがあって、それをどう伝えるかっていうところにしかデザインがないのだとすると、デザインの役割はかなり狭い。海洋環境デザインは、伝えるもの自体を問い返していくことでもあると思っていて。

スタッフS:デザインがモノの形という風には全然思ってなくて、生きる「行為」に近いっていうのはすごい思ってる。国際海洋環境デザイン会議に協力してくださったCOMPANYが言っていたように、作家に会いに行くこともデザイン、そこからアウトプットするのも、もちろんデザイン。ショップで売るのも、梱包するのも、包装するのも、値付けすることもデザイン。そしてそこには常に創造性が必要になってくる。そう考えると、デザインは生きることとイコールになってくるって思ってる。

海のためにという意識はもちろんあるし、そのためのデザインということも大事にしたい。でもそれだけをやりたいわけではなく、海のためになることも、海から何かを得てデザインすること、どちらも海洋環境デザインだと思う。相互関係みたいなのを作っていきたいっていうのはある。

私たちの活動は「海のため」?

スタッフT:そっか。「海のために」っていうのがあるんだ?

スタッフS:ある。

スタッフO:私はないですね(笑

スタッフE:……海のために?

スタッフS:やっぱり責任があるよね。デザインに関わってる以上は、プラスチックと生きてきたし。

スタッフT:海に対してネガティブな影響を与えてしまってるから、それに対しての責任としてってこと?

スタッフS:ものづくりに関わるっていうのはそういうことだと思う。

スタッフT:なるほど、それが海のためって言葉になるってことか。Eさんどう思う?「海のため」について。

スタッフE:ある論文で「人間は、人間が主体で、自然は操作したり利用したりする客体として捉えている」みたいなのを読んだ時に、たしかに!と思って。なんかすごく「自然って偉大だな、すごいな」って思う時もあるんですけど、でも、どっかで「守ろう」みたいな、「守ってやるか!」みたいな感情もあって。そういう自分の気持ちにすごいハッとしたっていう。 Oさんはどうですか?

スタッフO:なんですかね……。私、そこまで考えていなくて。海のことについて知らなすぎたっていうのが、ずっと思っていることです。何かできるというところまで、まだいけていないという感じ。まだ知っている段階で具体的には動けていない状態です。少しずつ見えてきたものはあるけど、じゃあ何ができるんだ?と。みなとラボに入って、海に関することを意識的に見るようになって、やっとですね。だから今、私は自然と対等ですとか、自然が上です、下ですとかそういう感覚にはなっていないです。

スタッフT:「海のため」って難しいよね。自分ではその言葉は使わないかな。海のためって思うかっていうと、そうじゃないかもしれない。ちょっと難しい。

スタッフS:「海のため」っていうのはちょっと語弊があるっていうか、おごってる感じに聞こえるかもしれないけど、 方向としては。

スタッフT:「私があなたのために」みたいな形で「海のために」って思ってないってこと?

スタッフS:やっぱり責任感はある程度あるっていう。

スタッフT:「海のために」って思ってるのかな。思っていない気がする。でも、海が汚れてると嫌だなって思うよね。もちろん海にゴミを投げようとは思わないし。
海をきれいにするのは何のためになのか?それを言葉にすると陳腐にしかならなくて、いろいろな複雑さがこぼれ落ちそうな感じがするよね。

スタッフS:もちろん普段の生活では、目の前のことでほとんど忙殺されてるんだけど、私は割とその先にでっかい夢みたいなのがあった方がやりやすい、みたいなところはある。その夢が「海がきれいになること」とかね。取材があるからここで一旦離脱しますー。

みなとラボは何をしているところ?

スタッフO:海洋環境デザインに関する比重が大きくなればなるほど、みなとラボって何をしてるところかっていう定義がより見えづらくなるのかもと思っています。いままでは、海と教育のことをやってるというベースでしたが、拡張してデザインも入ってきた。そんなときにあらためて、みなとラボって何ですか?という質問を投げかけられることがあります。「海と人とを学びでつなぐ」という大定義はやっぱり意味が広いので、だからこそいろんなことができるんですけど、ちょっと見失いがちになってしまいそうな時があったりして。

スタッフE:私がみなとラボを最初に知った時に、「海と人とを学びでつなぐ」という思想が会社になるんだ!っていうのがまずあって。でも数ヶ月ぐらい働いている中で、意外と同じような言葉で活動している団体っていっぱいあるんだな~と。じゃあ、みなとラボはその中でも何が違うんだろうっていうのが、気になっていたところです。

スタッフT:みなとラボの特徴というのは少しずつ変わってきていると思う。最初は自分の教育学の専門性を活かしながら、学校での授業作りというのがあった。学校ではなかなか実施できない、体験できないようなことを授業として提供する。イベントではなくて、あくまで授業として実施する点に特徴があったと思う。
それはベースにありつつも、今は新たな展開が生まれるフェーズになっていると思う。Sさんが入ってきて、Oさんが入ってきて、Eさんが入ってきて。それぞれちょっとずつ違うスキルを持ってる。それを生かした形でプロジェクトを組んでいくのがいいなと思っている。でも、それも何のために?という軸がないとね。
その変化は、時代的に海と教育を結びつける事例が少しずつ増えてきてるっていうことも背景にはある。始まった時には同じような団体って全然なかったけど、それが少しづつ増えてきた。みなとラボのような取り組みが社会に増えればいいとも思っていたので、望ましいことだと思う。その中であらためてみなとラボの意義を振り返るタイミングではあると思っています。

じゃあ、この先みなとラボはどうしていくのか?
やはり最大の目的は、「海と人とを学びでつなぐ」ということを、文化として位置づけるってことかな。それも持続させられるものとして作る。 それがあってこそ、可能性が色々でてくると思う。おもしろく海を調理していくみたいな。それを教育プログラムにしていくっていうのが、第1フェーズのみなとラボの方法としての強みであったとすると、 そういう活動をしていること自体を、文化に据えていくというか。そのためにどうすればいいかを考え、新しいチャレンジをしていくっていうところかな。 じゃあ、なんでいろんなアプローチを取ってきたかっていったら、やっぱり海と人が離れてしまっているという原点に戻ってくるんだけど。それをつなげるっていうのが大切だよね。

やっぱり引っかかる、海の「ために」?

スタッフE:あらためてOさんは何のためにこの活動をやってますか?

スタッフO:元々、海にも教育にも関わっていなかった私が、ご縁でみなとラボで仕事をするようになりましたが、自分にとって海と関わる仕事は絶対にやりたいこととしてあるわけではありません。でも、活動する中で、面白いなともっとこうしたいなとか関わりがいがある仕事だなとは感じます。

スタッフT:ここ最近、なぜみなとラボを始めたんですか?と聞かれるのだけど。自分は海の専門家ではないし、海がめちゃくちゃ好きなわけでもない。そもそも教育学の中でも、哲学や人間学を専攻していて、どちらかというとインドア派。だから、海を伝えたいというすごく強い熱量があるわけでもない。でも社会において「海」が軽視されている、そもそも「海」を教わらないというのは圧倒的な事実で。社会を見た時に、海というものをちゃんと伝えておくというか、海は知らないといけないよね、っていうことは強く思っている。
海について意識を向けなくても幸せに生きていけるんだとしたら、それは望ましいことかもしれない。でも、もはやそういう夢は思い描けない。津波は来るし、地球温暖化ですごい豪雨も来る。生活を支えていたものが海で、知らぬ間に支えの底が抜けそうになっている。自分たちの足元にあるもの、基礎を知らないのはどうかなと思う。そのことが問題にもならない社会もおかしいと思っている。

自分は東日本大震災があって、研究はやめようと思ってた。震災の後、海とどう関わって生きていくか、その問いについて考えていた。それは個々人が考えることも必要だけど、その問い自体は社会で共有されるべきものだと思っていた。大きすぎる問いで、その責任を個人に求めるべきものではない。津波が来ることがわかっていた場所に住んでいたのが悪いんですと語る地理学者がいて、強い苛立ちを覚えたこともあった。そんなことを考えていたら、縁あって海洋教育に仕事としても関わることになったんだよね。自分が感じていた疑問を仕事としてもやっていけるようになった。 もう一方で、海というテーマを通じて、 自分自身が教育としてこだわってきたこと、やりたいと思っていたことをやれるというのもあった。

どのレベルで海のため?という風に捉えるかだけど。あんまり言いたくないけど、子供たちのためにっていうのもあるのかも。…うん。子供たちのためっていうのはあるかもね。 あえて言葉にするんだったら、そうかもしれない。もっとめんどくさく言うとしたら、子供たちが死ぬのを見たくないからっていう、自分のためなのかもしれないよね。子供たちからしてみたら、あなたたちのために活動していますよ、と言うと、望んでなくても押し付けられちゃうじゃん。特に学校教育の場合。しかも、権力がある大人があなたのためにやってるんですよって言われたら、それって圧倒的な非対称じゃない?それが嫌だというのが根っこにある。でも、教育って基本的に非対称だよね。非対称であることでしか生まれ得ないものも間違いなくなって、「教育」という形だからこそできるものもある。それは何なのかは考えなければいけない。他方で、無意味な非対称の暴力はなくしたい。

知られていない海と教育のこと

スタッフO:でもそもそもみんな思ってる以上に、海と教育のことを考えてないですよね。まずそこが結びついてると思っていない。教育に対して、先生じゃない人たちが何かをしているってことすら知らない人たちが多分圧倒的なはずなんですよ。私自身がそうだったので。もうちょっと知ってもらうすべはあるはずなのに。

スタッフT:基本的には全員が義務教育を受けてきているじゃない?トークイベントとかで、海について教わんなかったですよねって聞くと、みんな頷くんだよね。だから、海の教育が行われていないということは理解を得られやすい。でも、そこから海について学ぶことがなぜ大事なのかまでは距離がある。なぜ大事なのかを考えた時に、海に問題が発生してて、生きるのが難しくなってきているからです、と強迫的な説明はしたくない。そうであることは事実なんだけど。だから、一度、人にとって海とは何なのかを考えてみている。そこから海の学びを形づくっている。だけど、その形というのはだいたいシンプル。その取り組みの背景はあまり表に出していないと思う。その解釈は人それぞれであるべきだし。深い意味もなく、単純に楽しいでいいじゃんって。

自分は物事を作る時にそういうプロセスでやるけど、それもどうなんだろうな?って自分でも思うことがあって。それがみなとラボの良さでもありながら、可能性を広げられていないのでは?とも思うところがあって。だからこそ、新しい風を入れようと思って、Sさん、Oさん、Eさんならではの視点を出してもらおうと。でも、ここだけは押さえておかなきゃいけないところはあるから、そこだけは押さえるけど。

なので、そういう形で、みなとラボのおもしろそうなイメージがありながらも、よくわからなさを生んでいた、自分の考えの複雑さへのこだわりは置いておいてもいいのかなって思うね。わかりやすくはあれないみたいな。それはもう消えようもないから、だからこそ逆にそれにこだわらなくてもいいじゃんと。それに今、社会的にも気候変動、海洋ごみなどで、 理解は得られやすい状況にはなってるから、みなとラボの役割をわかりやすく伝えていくのは大事かもしれない。

わからない海を形にして共有すること

スタッフO:私はやっぱりTさんの言葉って必要だと思っています。深くまで突き詰めて見たものって、なかなか自分では到達できないので、共有してもらうしかないんです。そこまでいってない人間がそれを想像して語れるようにならなきゃいけないんですけど、語るためにもTさんの頭の中にあるコアを知りたいですね。私はどうしても表層しか見れていない気がしていて。
実際、Eさんが入ってきたり、デザイン会議に向けて動きはじめたこともあり、Tさんがより具体的に話をしてくれるようになった気がします。少しずつ共有してもらえると、こういう場が生まれたりしてみなとラボとしていい形で進んでいるような。

スタッフT:そうだよね。自分がどう考えてるかは一切気にしないで、それぞれが感じているみなとラボの可能性を語ってくれていいよとは思っていたんだけど、やはりそれは難しいよなとも思っていて。
いつも考え続けていていることには変わりなくて、それをプロジェクトとして形作って表現しているとは思うんだけど、言葉としては出していないものね。実際、言葉としてはまとまっていなかったというのが本当のところなんだけど、ここ最近になってパズルがカタカタと埋まってきている感もあって、言葉が出てくるようにもなってきている。一度、形にしておこうとなってきている。

スタッフO:なんだか逆に、みなとラボはわかりにくい団体ですって言っちゃうのも良いですね。わかりにくいけど、海のことを考えているという。

スタッフT:確かに海ってわかんない。大きすぎるし。だからあんまり考えられてこなかった。そんなわからない海について 考えている団体です。それを探している団体だよね。海と教育だけじゃなくて、海と人間の共生のあり方もどうあるのが望ましいのかわからないから、探してる団体だよね。そのために教育がどうあればいいのか、社会がどうあればいいかを探している。