沖縄県・池間島

海と人とのかかわりを探究するvol.2【沖縄(池間島)研修編】

2019.12.10

東京大学では、海と人とのかかわりを探究するための沖縄研修プログラムを実施しています。過去に東京大学附属中等教育学校の授業として実施されていた講座がベースになったプログラムです。高校時代にその講座を受講し、現在は大学生となった卒業生4名がプログラム内容をレポートします。

沖縄研修について

私達東大附属の卒業生4人と在校生7人は、8月22日から25日にかけて、4日間の沖縄研修に参加しました。
この研修は、池間中学校の生徒たちと東大附属の生徒との交流や、池間島での民泊を通じて、島で生きる人々が海とどのように関わりを持って生活しているのか、その姿を、様々な分野からひも解いてゆくことを目的としていました。

世界初の地下ダム

研修初日、夕方に宮古空港に到着した我々はまず、宮古島本島の地下ダム見学を行いました。水の確保に悩まされてきた歴史、農業による島の発展という目的のもとで地下ダムがつくられたという事情、島の地理的な特徴などについて学ぶことができました。ちなみに、地下にダムをつくったのはここが世界初なんだとか。
研修2日目、ついに池間中学校との交流です。両校の生徒は顔合わせ式のあと、共に宮古島にあるハンセン病歴史資料館・国立療養所宮古南静園で共同学習を行いました。ここでは資料の見学だけでなく、実際に入園している方から直接お話を聞く事もできました。見学後、東大附属在校生の1人は、「この資料館が一番伝えたかったことは社会には未だにハンセン病に対する偏見が残っているから、それを無くさなければ本当の意味での元ハンセン病患者の社会復帰は成されない、と言うことだと思う。みんなが正しい知識を持つことって、あたりまえだけど本当に大切だと感じた」と答えてくれました。大勢が事実を勘違いして一部の人を攻撃するという構造は、規模や形が違えど現代にも起こりうるものであると感じました。

島に仕事を作る

午後はいくつかのグループに分かれて、池間島内でのフィールドワークです。「島に仕事を作る」をテーマに、島にある素材(植物)を生かした商品を開発することが目的です。翌日(3日目)の商品開発会議に向けて、両校の生徒たちは植物図鑑を片手に、島内の植物をたくさん集めました。協力して素材探しをする中で、午前中の資料館見学ではおとなしかった生徒同士の口数も増え、活き活きした様子が見られました。

私のグループでは全部で25種類もの植物を集めましたが、その中でも生徒たちが商品開発の素材として特に興味を持ったのはハマゴウ、イシクラゲ、フクギの三種類でした。

ハマゴウは一見するとただの可愛らしいお花ですが、薬効のある植物です。その特徴的な香りは蚊よけとしても使われてきたそうです。その他、葉の部分を食べることが可能であり、茎の部分はしなやかに曲がるため籠などを編むことにも利用できます。植物全体をどこも余すことなく使うことができる、という点で非常に魅力的な植物です。

イシクラゲは、海中では無く陸地に発生する藻の一種だそうです。根なども無いので、簡単に拾うことがでます。初めてイシクラゲを見た私には、乾燥わかめを連想させました。食べ方も乾燥わかめと同じで、ぱりぱりの状態から水で戻して食べることができるそうです。この不思議な植物に生徒たちは興味津々、学校に戻ってからは実際に水につけてもどしてみました。水を吸ったイシクラゲはぷにぷにになり、みんな驚きながら触っていました。

フクギは、オレンジ色の実がなる木です。実は甘くコウモリなどの大好物だそうですが、ギンナンのような特徴的な臭いがするため、商品化に利用するには臭いが課題となりそうです。フクギの木は島内にたくさん生えており、その実は動物たちも食べきれず余っているそう。商品化に利用するにあたり、素材が豊富にある、という点で有利だと考えました。
 

商品化の可能性を探る

3日目は、集めた材料を元に商品の企画会議を行いました。商品の具体化に向け、持ち帰った植物をじっくり観察する生徒や、パソコンを用いて調べ物をする生徒など様々でした。
その後、班ごとに代表案を一つ決め、商品化に必要な材料や大まかな製造方法まで調査をし、発表を行いました。発表のためのポスター準備や試作品の作成など、池間中学校の生徒と東大附属の在校生が協力して作業に取り組む姿が印象的でした。
最終的には多数決の結果、タロイモと島バナナを使った「いけたぴ」というタピオカドリンクの商品化が決まりました。その後「いけたぴ」は試行錯誤の末、加工や採算性の問題から本格的な商品化は一旦保留になってしまいましたが、この経験を活かし、シマヤマヒハツの化粧水の商品化プロジェクトが進行しているようです。

民泊での体験

今回の研修で、池間島で民泊を営む仲間貴美子さんのお宅に泊まらせていただきました。民泊客は年々減ってきているそうですが、おじいとおばあとのゆんたく(おしゃべり)やおばあ特製の手料理は、ホテルや旅館では体験できるものではありません。野球が大好きなおじいと野球の試合の中継を見ながらおしゃべりをしたり、沖縄の方言を教えてもらったり、日中の活動についての話を聞いてもらったり…まるでふるさとで自分の祖父母と話しているかのような、暖かい時間を過ごすことができました。短い間でしたが、民泊を通して池間島ならではの生活を体験し、おじいとおばあの暖かさに触れ、充実した時間を過ごすことができたと思います。

沖縄(池間島)研修を通して

池間島には中学校が一つしかなく、生徒の数は全校生徒を合わせても10数名です。普段そんな狭いコミュニティの中で過ごす彼らと、東京からやってきた年上の私達とが突然共同で作業をするだなんて大丈夫だろうか、という不安はありましたが、そんな心配は無用でした。東京から来た私達にとって、島の植物はどれも初めて見るものばかりで非常に興味深かったのですが、池間中の生徒たちもガイドさんの説明を聞いたり図鑑で調べたりしながら植物を見るのは初めてとのことで、共に発見や驚きを共有しながらフィールドワークを行うことができました。
フィールドワーク終了後、ある池間中の生徒に感想を聞いてみたところ、「今日採ってきた植物はすべて普段から見慣れたものばかりだったけれど、ちゃんと効用や使われ方があると知って見方が変わった。これからはその辺の植物も蹴飛ばしたりしないようにする」と話してくれました。島の植物を大切にしようという気持ちが生まれたそうです。
一方、東大附属の在校生は、「生活の中で活かせる野草がたくさんあって驚いた。自分たちが普段いかに製品化されたものばかり使っているか気付かされた。」と答えてくれました。同じ体験をしても、やはり普段過ごす周りの環境が違うと気付く事も違ってくるのだと感じました。
 


サポート役として参加して

この沖縄研修を通じて、活動の内側にいるひとりの参加者だった在校生時代とは異なり、プロジェクトの活動を初めて外から見ることができました。池間中学校の生徒と東大附属の在校生たちの関わり合いや打ち解けていく様子など、勉強になることがたくさんあり、非常にいい経験をできたと思っています。この記事を通じて、池間島の魅力や、池間中学校の生徒たちのこれからの活動に興味を持っていただけたら嬉しいです。(井上)


編集後記

宮古島・池間島での学習活動と、夏の島の魅力的な光景の両方が伝わってきますね。卒業生にとっても、中・高校生の学習活動のサポートや雑誌の取材と並行して、在校時とは少しだけ違う視点から「海と人」の学びを観察するという、貴重な経験になったのではないでしょうか。(加藤)
 


■本プロジェクトの実施について本プロジェクトは公益財団法人日本財団の助成により東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センターが実施するものです。
 

文:
井上日菜子
写真:
井上日菜子・岡本尚子・楢崎晃弘・田中陽星
編集:
加藤大貴