2023年9月29日~10月9日まで、みなとラボと日本財団との共同で開催した「第二回 国際海洋環境デザイン会議 / エキシビション「OCEAN BLINDNESS ー私たちは海を知らないー」展」。その開催レポートの第一弾として、海洋環境デザインプロジェクト会議の概要をお届けします。
デザインの座標を持って向き合う
国際海洋環境デザイン会議は、海の可能性や魅力を探求することから深刻化する海洋問題まで、さまざまな論点と視点を「デザイン」の座標を持って向き合い、社会及び教育現場で具体的にアクションを起こしていくための起点を作ることを目的に、日本財団との共同にて開催しています。2022年7月30日に第一回目、2023年3月21日には教育にフォーカスする「Side:Education」を開催し、今回が第二回開催になります。
第二回開催では、会議プログラムに加えて展示を行いました。世界には海洋環境問題の解決に向き合うデザインが数多くあります。それら具体的な事例をみせることで、海洋環境デザインの現在を確認し、共有することが目的のひとつです。
展示は大きく二つの構成をとっています。一つは、海洋環境の改善に向けた製品です。廃棄漁網や海洋プラスチックごみをリサイクルして生まれた家具やカーテン、海の美しさや文化を伝えるプロダクトです。もう一つは、みなとラボが手がける海洋環境デザインワークショップの成果物や関連したプロジェクトの展示です
みなとラボでは、海と人との共生のためのデザインを「海洋環境デザイン」と定義しており、展示物すべてな多様なアプローチによる「海洋環境デザイン」だと捉えています。ただ、海と人との共生というのは、あくまで目指すべき状態であり、その具体的なあり方には絶対的な答えはありません。海とのどういう関わり方を形作るかという「問い」があり、そのあり方をめぐって話し合いを重ねながら、よりよいあり方を描いていくことになります。その時、デザインもまた問いとともにあります。
デザインの功罪
第一回国際海洋環境デザイン会議より、山田泰巨さんがVitraのプラスチックの捉え直しを紹介。
第一回の会議で話題になったのは、海洋環境の問題、とりわけ海洋プラスチックや地球温暖化の問題を推し進めてきたのは「デザイン」ではなかったかということです。
大量生産の時代、物を作る行為としてのデザインの可能性は広がりました。他方で、それは大量消費とも一体であったことは否めません。特にデザインにとってプラスチックは夢のような素材であったとも聞きます。しかし、いまやプラスチックは安易には使えないものになっています。だからと言って、プラスチックを否定するのではなく、そのメリットを確認しつつも、あらためて、物を作ること自体を問い返さなければということを確認しました。
それとともに、海洋環境の問題はすぐに解決できるものではなく、長い期間にわたり取りくみ続けなければならない問題であり、その時にデザインにできるのは何かということが問いとしてあがりました。
OCEAN BLINDNESSをどう乗り越えるか
これらの問いを引き受けて開催したのが第二回国際海洋環境デザイン会議です。トークやディスカッションのプログラム、ワークショップ、そして展示を実施しました。最初からこのような形の実施計画があったわけではありません。海と人との共生に向けて何が必要なのかを考え、デザインというアプローチで、いま、何ができるのかを考えた結果の形です。
テーマはOCEAN BLINDNESSとしました。この言葉は、ユネスコIOCで海の教育の必要性がうたわれるときに使われた言葉です。そこでは、海を見ていない/見えていないがゆえに、海への無知と無視、それゆえに海洋問題が引き起こされていると出張されます。否めない事実でしょう。だからこそ、海についての知識を持つべき重要性が強調されます。しかし、はたして、海についての知識を持てば、海洋問題は解決に向かうのか。知識の重要性は言わずもがなですが、知識の無さが原因なのでしょうか。私たちは、知識がなくても、より善い行動を取ることがあるのを知っていないでしょうか。その時、何が行動を促すのでしょうか。私たちは、自分の中の海との「つながり」だと考えています。逆に言えば、OCEAN BLINDNESSを引き起こしているのも、海とのつながりの不在であるとも考えています。だからこそ、みなとラボは「海と人とを学びでつなぐ」をテーマにしています。
この「つながり」の不在が課題であると捉え、みなとラボでは、海とのつながりを取り戻すために、海について知ること、海を楽しむこと、海にふれること、海で想像すること、さまざまなアプローチを作っています。それも、海とのつながり方は多種多様であり、その時の感情もまた多様であるからです。多様なアプローチで、多様な感情とともに、それぞれに好きな形でつながりをつくっていきたいと考えています。
それをデザインという軸のもとに具体化し、さまざまな表現や取り組みを集めた場が、第二回国際海洋環境デザイン会議です。ワークショップの成果報告、参加型のワークショップ、ディスカッション、展示。それぞれがどのようなアプローチでどのように海と私たちをつなぐのか。各プログラムごとにレポートします。
展示をバーチャルツアーで体験する
惜しまれつつも終わってしまった本展をバーチャルツアーとして体験できるようになりました!会場の雰囲気や展示を体験することができます。会場にいらっしゃることが叶わなかった方、もう一度展示を見たいという方、どんな展示だったのか関心を持たれている方、ぜひ、360°体験をしてください。
>バーチャルツアーを体験する<
※ 音が流れます。ご注意ください。
本プログラムは、360°体験できるアプリケーション「WHERENESS」を提供しているアクチュアル株式会社様のご協力のもとに提供しています。
実施概要について
第二回 国際海洋環境デザイン会議 2nd International Conference on Design for Ocean Environments / エキシビション「OCEAN BLINDNESS ー私たちは海を知らないー」展
開催日:2023年9月29日(金)〜10月9日(月・祝)
会 場:アクシスギャラリー(東京都港区六本木5-17-1 AXISビル4F)
入 場:無料
主 催:3710Lab(みなとラボ)
共 催:日本財団
特別協力:THE DESIGN SCIENCE FOUNDATION
協 力:アクシスギャラリー、アルテック、クリスチャン・フィッシュバッハ、甲子化学工業、スカンジナビアン・リビング、田島ルーフィング、DeVorm、ニュートラルワークス.(ゴールドウイン)、博展、ハーマンミラー、フォルボ・フロアリングB.V.、ボーネルンド、三菱鉛筆、武蔵野美術大学
プログラムはこちら。
- 文:
- 田口 康大
- 写真(第二回デザイン会議):
- Masaaki Inoue