海藻の“ネバネバ”が接着剤に!? コンテンポラリーデザインスタジオwe+が、博展、セメダインと共同で、海藻由来の新しい接着剤「LOOPGLUE」を開発。強力に接着しながら、水に浸すと簡単に剥がせるという相反する特性を実現した。なんと開発のきっかけは、2023年9月にみなとラボが開催した第二回国際海洋環境デザイン会議。約2年半を経て完成した、海藻由来接着剤の製品説明会へ行ってきた。
みなとラボとも数々のプロジェクトで協業してきたコンテンポラリーデザインスタジオのwe+。「なぜ作られるのか」「どんな意味があるのか」といったデザインの本質に向き合い、探求と実験を重ねながら価値を生み出す活動が、国内外で高く評価されている。そんなwe+が今回、海藻由来の接着剤「LOOPGLUE」を開発。イベントや展示会の企画・デザイン・施工を手がける博展、そして創業100年を超える接着剤メーカー・セメダインとの共同事業によって誕生した。
「LOOPGLUE」の最大の特徴は、強い接着力を持ちながら、水に浸すことで簡単に剥がせる点にある。この相反する性質を両立させているのが、主成分である海藻由来の「アルギン酸ナトリウム」。いわゆる海藻の“ネバネバ”成分だ。
会場で行われたデモンストレーションでは、しっかりと接着された素材が、水に浸すことで驚くほどスムーズに剥がれる様子が披露され、その性能の高さを実感することができた。
海の素材を継続的に研究してきたwe+は、以前から昆布に含まれる天然の粘着成分に注目。接着性の可能性は想定していたものの、博展のスタジオで実験を重ねる中で、水に溶けやすいという性質を発見。この気づきをきっかけに、製品化へと動き出した。
その後、セメダインも開発に加わり、粘着性の検証や組成の検討が進められた。「いかに剥がれないか」を追求してきた同社にとって、「剥がしやすい接着剤」は新たな挑戦でもあったという。
原料となる海藻は、南米・チリから調達。生態系への影響を抑えるため、自然のライフサイクルを終えて海岸に漂着したもののみを採取している。現地の雇用創出にもつながっているという。
実は、このプロジェクトのきっかけとなったのが、2023年9月にみなとラボが開催した「第二回 国際海洋環境デザイン会議」だった。「OCEAN BLINDNESS ―私たちは海を知らない―」をテーマにした会議とエキシビションにおいて、会場構成をwe+が、施工を博展が担当。開催にあたり、みなとラボ、we+、博展の三者は、会期終了後の解体を前提とした仮設空間において、廃棄物の削減と再利用の実現を目指していた。また会期中には、「仮設空間の装飾におけるサステナビリティと海洋資源の可能性」をテーマにクロストークも開催。それぞれのプロジェクトから見えた課題や考察を出発点に、海洋資源活用の可能性を探るディスカッションへと発展していった。
photos:Masaaki Inoe
そして会議終了後のwe+と博展との打ち上げでの「海藻で接着剤ができるのではないか」――そんな会話から、このプロジェクトはスタート。循環型イベントの実現を目指す博展では、接着剤で貼り付けられた素材の多くが廃棄されてしまうことを課題として捉えていた。そうした背景もあり、開発が具体的に動き出していったという。
photo:Masaaki Inoue
現在、「LOOPGLUE」は特許申請中。詳細な配合は現段階では非公開だが、すべて自然由来の成分で構成されており、有害物質を含まない。教育現場での活用にも期待が寄せられている。
2023年9月、第二回 国際海洋環境デザイン会議の打ち上げから始まったこのプロジェクトが、約2年半の時を経てついに完成。海の可能性を改めて実感させるこの取り組みをより多くの人に伝えるため、みなとラボではワークショップの開催を計画中だ。
<写真>左からセメダイン製品部規格管理チームの西村香菜氏、we+の安藤北斗氏、博展サステナビリティ推進部部長サーキュラーデザインルーム統括の鈴木亮介氏。