2017年夏に宮城県石巻市にて開催された Reborn-Art Festivalにおいて、3710Labの田口康大が連動プロジェクトとして「人が生きる術を探る」をテーマに石巻市立荻浜中学校にて特別授業を実施しました。 Reborn-Art Festivalの会期中には、授業のドキュメント映像と対話インタビュー映像三本(いずれも監督:福原悠介)を上映展示しました(展示設計:伊藤裕)。 以下に展示した二つのテキスト原稿を掲載します。
宮城県石巻市荻浜・狐崎浜の対話インタビュー-「人が生きる術」を探る−
地域にたしかに息づいている「生きる術」はどのように継承され、今後どのように継承されていくのでしょうか。そしてまた、人が生きる術=Reborn-Artとは何なのでしょうか。この教室に展示されているのは、そのことに、「教育」という観点から取り組んだ「授業」の記録と営みです。
授業は今年の8月21、22日の二日間にわたり、石巻市立荻浜中学校にておこなわれました。授業のテーマは、-「人が生きる術」を探る-。学年に一人の生徒が、生きる術とは何かを探るために、親や親戚と「対話インタビュー」をおこないます。
1日目には、地域文化の継承活動を営む山伏の成瀬正憲さんの話を聞き、生きる術についての考えを深めました。2日目は、対話インタビューの実践です。そこでは、一方向的に話を聞き、答えてもらうのではなく、お互いの<対話>をうみだすような場作りを試みました。
この授業は、「生きる術」とは何かを教えたり、伝えたりするようなものではありません。これからの「生きる術」のあり方を考えるきっかけとして、日常会話とは違う<対話>の空間を作っただけの授業です。ただそれだけのシンプルな授業です。そうでありながら、三つの対話インタビュー映像のなかには、とても豊かで、かけがえのない何かがあります。もしかすると、そこにあるものこそが、「人々が生きる術」なのかもしれません。
田口康大
「対話インタビュー」とは?
「対話インタビュー」は、インタビュアーが一方的に質問して情報を聞き出すかたちではなく、誰かに何かを聞くことをきっかけに、お互いのあいだに「対話」が生み出されていくような場づくりを目指しています。
具体的な手法として、語り手と聞き手が向き合い語り合うようすを、二台のビデオカメラで二人それぞれを同じように撮影する形式を取っています。
これはドキュメンタリー映画『なみのおと』(監督:酒井耕・濱口竜介)などをヒントにしたもので、2017年から、3710Labの田口康大と映像作家の福原悠介が、高校などで特別授業として実施してきました。
「対話インタビュー」では、語り手だけでなく聞き手にも向けられる「カメラ」の存在によって、日常会話とは違う「対話」という行為を意識し、同時にそこに映っている人間の姿を通して、「映像」が持つ力について主体的に考えていくことを試みています。
福原悠介
Reborn-Art Festival 公式サイト
- 文:
- 3710LAB
- 掲載原稿:
- 田口康大・福原悠介