日本で唯一の島マガジン『島へ。』を出版する海風舎との共同プロジェクトにおける第1回編集会議の様子を、レポートの前編「島にだけある魅力とは?」に引き続きレポートいたします。
橋が架かることで生じる影響を考える
架橋について、参加者それぞれが思うところ感じるところを語っていきます。
「最初のほうは活気が生まれると思うんですよ。でも、ストロー現象みたいに、内側だけで完結していた産業が外に出て行ってしまって、外のほうが便利なので、大島の産業には悪影響になってしまうのではないかなと思います。」
「大島に宿泊で来てくれてた人たちが、橋が架かることによって、いつでも行き来できてしまうので、宿泊という面がなくなってしまうことと、大島から出て仕事をしていた人とか仙台に行っていた人たちが、陸続きならいつでも帰って来れるから、わざわざこっちに戻ってきて仕事をする必要ないと感じる人もいるのかなと思いました。」
「船で移動するよさがなくなる。船で行くというのが大島の魅力の一つだと思うので。島に帰るときに(ウミネコに)かっぱえびせんを投げられなくなってしまう。」
意見を聞くと、どちらかというと橋が架かることには反対の人が多いようでしたが、それは「大島の魅力」を知っているからこそなのかもしれません。
漁港から揚げられた魚が干されている風景、漁業者が昼時にくつろいでいる風景、船に乗って帰ってくる人々。そんな原風景としての大島が失われてしまうのではないかという思いが、そこに生まれ育ってきたからこそあるのかもしれません。
熊本さんは、参加者のそのような意見の根底にある思いを汲み取りながら、先を見据えることの大事さを伝えました。
「橋が架かったのは一つ大きな変化のきっかけになるけども、そこの島の魅力を維持しようとする人、あるいは新しい魅力を作り出そうとする人たちがいれば、けっして橋が架かったことで受けるマイナスの影響に負けないものを作りだすことができるはずだなと他の島を見てても言えると思う。ぜひそういう種をね、大島の魅力の種をね、あるいはすでにある、失われるかもしれないけど残していかないといけないものがあるというのを考えよう。大島で好きなこと、大島の何が魅力かっていうのを深堀りしていこう。」
大島の何を残していきたいのか
何を残していきたいのか。それは「大島」そのものを考えることでもあります。ここで考えられたことが、テーマ設定・企画趣旨へとつながっていきます。
大島で好きだなと思っているもの、愛着を持っているものについて聞いていくと、大島の柚子や気軽に海に行けることなどがあげられました。その中でもおもしろかったワンシーン。
「残したいもの・・・・・・亀山から上る朝日!ダイヤモンド亀山!」
「なに、ダイヤモンド亀山?」
「ウチのほうから見る・・・・・・」
「ウチがわかんないんだけど?笑 南のほうから?」
「そうです、南の高台から、ちょうど亀山が東になので、亀山のほうから太陽が昇ってくるんです」
「それでうまく太陽が山頂にはまるとダイヤモンドってことね」
「そうです!」
他にも、「信号が一か所しかない」ということがあげられました。大島で生活しているかぎりでは信号機は必要ないのだけど、小学生が信号の渡り方を学ばないと、本土に行った時に困るという理由で、小学校の前に一か所だけ信号機があるのだといいます。その他にも、大部分の人がマイボートを持っているなどといった意見もでました。
その他、
「家から息をとめてでも行ける距離で釣りができる」
「息の止められる長さは、人によりけりだから!!笑」
そのような感じで和気あいあいと進みました。第2回の編集会議までに、それぞれが企画のテーマや取材したい人、取材したことなどを考えてくることを課題として、ワークショップ兼第1回編集会議を充実とともに終えました。
これから夏にかけて編集会議と取材を重ね、『島へ。』12月号(11月15日発売)の発売に向けて取り組んでいきます。私たち自身が想像していたよりも、高校生たちが活発に意見を出してくれ、それぞれが気仙沼・大島に思い入れがあることが感じられました。どんなテーマをたて、どのような場所に取材をし、どのような紙面をつくり、いかなる思いを発信していくのか。今後の展開がとても楽しみです。
前編はこちら
本プロジェクトは日本財団の助成により実施している事業です。