連載

長崎県|長崎県立宇久高等学校

島を編む 【宇久島の未来をつくるプロジェクトvol.7】

2018.12.04

学校離島地域海洋教育

10月8日、「宇久島の未来をつくるプロジェクト」第5回編集会議を実施しました。雑誌作りも大詰めの段階に入り、記事やデザインに関する改善点を議論しました。その様子をお伝えいたします。

レイアウトの仕上がりを確認

メンバーの手元にはレイアウトがあります。雑誌『島へ。』の誌面にかなり近づいた見た目になっています。
このレイアウトは、メンバーが制作したラフをベースに、デザイナーがそのラフの制作意図を汲み取ったうえで形作ったものです。
そのため、写真の数やテキスト量を変えている部分があります。ページ数が1ページ分増えているものもあります。

まずは、デザイナーが変更を施した自分のラフを確認します。
確認を終えたら、他のメンバーが担当している記事のラフもチェックします。

各メンバーに自分の担当ページのゲラに関して説明をしてもらった後、自分なりの改善案を述べます。
その後、ほかのメンバーたちにも改善案を述べてもらいます。
「”すごさを実感した”という表現をもう少し工夫したらどうかな。どうすごいのかを伝えた方がいいかも」
「体験しての感想を入れるとすごさが伝わるんじゃない?」
編集者らしい発言が飛び交います。
ほかにも、魚の写真が血が出過ぎているので差し替えたほうがいいのではないか?写真の配置と地図の位置との対応関係を整理してはどうか?魚の名称が釣りに詳しくない人にもわかるようにキャプションをつければいいのでは?といった意見が出ました。


デザイナーからのアドバイス

この日はデザインとテキストそれぞれについて作業をします。
デザイナーの吉村雄大さんからはあらかじめ各メンバー向けにレイアウトの課題と改善案をまとめてもらっています。レジュメからそれぞれ抜粋すると、
「レイアウト(タイトルまわりも関連しますけれど)が地味かもしれません。写真の大きさなど、少し考えてみてはどうでしょう?(参考つけます)」
「右ページと左ページで写真のグルーピングを確認、整理するといいでしょう。(右が歴史で、左が方法など)」
「欲を言えばメインの大きな写真は海をバックにする等、もっと背景に何も映らず、魚が目立つように!」
「文章も気持ちが入っていて、ページから文化の豊かさが伝わってくる。生かすも殺すも、あとはメインの写真次第!」
「写真を含め、伝えたい雰囲気が明確でよいです。それを考えると本当はマップを完全にイラストで起こすべきですが、こちらでできるか考え中。絵がうまい人とか学校にいないでしょうか?あとは手書きで文字を加えても面白いかも」
それらを『島へ。』編集部の熊本鷹一さんがメンバーの総意を汲み取って意見を取りまとめていきました。

特集ページの順番決めもおこないました。
「各ページは大きくテーマを自然と文化でまとめていたよね。そのブロックで考えるのか。あとは、写真のインパクトがあったり目を引きそうなページを最初に持ってきたらどうか。情報が多かったり複数の細々とした情報が散らばっているページは特集の後半にすることが多いです」
ヒントを参考にどの並びがいいかを検討しました。
ほかにも、タイトルまわりの共通性、2行リード文を付記するかどうかについて検討しました。


正確さ・簡潔さ・高校生らしさ

次はテキストについての検討です。
まずは熊本さんが原稿について総評を行い、誌面に掲載されるためには不十分な点を指摘していきます。
「今日は僕が原稿に入れた赤字部分についてリライトと追記の作業をします。返却した文章は自分でちゃんと読み返してみてください。自信がない記述や表記については調べて確信を持つこと。場合によっては電話で問い合わせたり、インターネットで調べて公式の情報を参照します。パンフレットやネット記事を参照したら、それを咀嚼して自分の言葉で表現することを心掛けてください。」

熊本さんからは、商業誌としての質を担保するための実践的なアドバイスが伝えられます。
アドバイスの例を一部挙げていくと、
「”~年くらい”をもう少し具体的に。数字に幅があるなら絞り込むこと」
「”アワビがわずかしか獲れない”というが、わずかとは具体的にどれくらいか。できるだけ具体的な数を書こう」
「”おすすめ”、”間違いなし”以外の言い回しをさらに考えてみよう。インスタ映えするかどうかは写真でわかることなので他の要素を盛り込んで」
「ブランド魚がどうしてブランド足りえているかの説明を加えた方がいい。漁協で取材した内容をもう一度確認してみて」
ほかにも、使用する写真の著作権に敏感になることも大事なこととして説明されました。

各メンバーは熊本さんから指摘されたことを調べました。直接有識者に電話をして問い合わせする生徒も。
なかにはヒヨヒヨ祭りの掛け声の由来や舟隠しの海の色がエメラルドグリーンになっている理由など、調べてもはっきりとはわからないこともあります。結果的にわからなかったとしても、自分が扱う情報が何らかの根拠や出典にもとづいているかどうかを確認する作業をしてもらいました。
編集会議後、鯨料理について追加取材をしました。

「文章力と一口に言うけど、人に何か伝えるという目的を持って取り掛かれば、おもしろいことは書けると思うんです。伝えるという目的を念頭に置けば、事実の客観性への意識をもつこと、必要なこと、必要のないものの選択と切り捨ての判別もできてくるはずです。もちろん労力をなるべく注ぎ込まないで課題を終えたいなどという考えで取り組むのではダメだけどね」
企画進行中、筆者にとって印象的だった熊本さんからのコメントです。
高校3年生の授業という枠の中で実施する関係上、活動には時間的な制約があります。そのため実現できなかったこともあります。それでも、半年間かけて取り組んできた中で、島に対する自分の想いや伝えたいことをどのように誌面に落とし込むかを考え抜いた形跡が記事の中には見て取れます。
材料となるサツマイモをイノシシが食べてしまうのでかんころもちを作ることが難しくなっている、という取材で得た情報を引用して、かんころもちという食文化にも宇久島の人口減少の問題が関係していることを紹介するなど、企画全体を通じて育んだ考えを誌面の中に着地させています。
3710Lab、編集者、デザイナーの3者は高校生メンバーたちが育んだ構想を形にするお手伝いをして
きました。

高校生たちの成果は11月15日発売の『島へ。』12月号に「長崎・宇久高「UkuLabo」のふるさと探求」として掲載されています。ぜひお手に取ってご覧ください!


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■本件の実施について
本プロジェクトは公益財団法人日本財団の助成により実施しているものです。

取材・文:
北 悟