連載

長崎県|長崎県立宇久高等学校

宇久島の本当の魅力って?【宇久島の未来をつくるプロジェクトvol.2】

2018.07.12

学校離島地域海洋教育

日本唯一の島マガジン『島へ。』を出版する海風舎との共同プロジェクトにおける第1回編集会議の様子を、「島という存在について考える(前編)」に引き続きレポートいたします。

島の魅力を発信する方法

まずは雑誌作りのプロセスの説明です。
情報収集~編集会議~ラフレイアウトづくり~取材・撮影~原稿執筆~原稿チェック~デザイン作業~校正・校閲~印刷・製本~書店流通、といった順番で、適宜説明を加えながら各作業工程を示します。
「みんなにはこれらのうち情報収集から構成・校閲までの工程に取り組んでもらいます。」
高校生がこれから取り組む作業はデザイン作業、印刷・製本、書店流通を除いたすべて。
つまりはデザイナー、印刷所、書店取次といった人たちが手掛ける部分以外の作業に取り組んでいくことになります。

「いずれの作業においても、読者にどのようなことを伝えたいか、感じてもらいたいかを想定することが大切です。それによって、文章の書き方、写真の撮り方、デザインの組み方は変わってきます。」
一例として、写真の撮り方一つで、読者に与える印象が違うことが実演を通して説明されました。

これらを踏まえて熊本さんから雑誌づくりのための指針が提示されます。
「記事を書くにあたっては、基本的には自分たちの好きなこと、思い入れのあることをテーマに選んでもらいます。ただ、一つ頭に置いてほしいのは、この雑誌は本屋さんに並ぶものであって、不特定多数の人たちが手に取るんだということ。君たちの書いた文章や撮った写真を見て、宇久島に興味を持って来てくれたり好きになってくれたり記憶に残ってくれるかもしれない、ということに想像力を働かせて取り組んでほしいです。」
「なので美味しいっていうのも、自分たちの感想とか主観だけでなく、隠し味があるんじゃないかとかを取材したり人に聞いたりして掘り下げていくことが大事です。」
記事内容を構想するに際し、読者を想定することの大切さが説明されます。
「僕らの仕事でもそうなんだけど、何のために、誰のためにっていうのが念頭にあって取材したり記事を書いたりする。見たもの聞いたものをどう読者に伝えるかを頭の隅に置きながらやっていきましょう。」


全国に向けて発信したい宇久島のヒト・モノ・コト

「じゃあ今日の編集会議はテーマ決めについてやっていきましょう。雑誌作りのプロセスの中では情報収集の前の段階ということになります。」
ここで各メンバーに自己紹介をしてもらいつつ、記事として取り上げたい宇久島のモノ・コトを挙げてもらいます。
「海」
「星」
「夕日」
「釣り」
「城ヶ岳からの景色」
自然豊かな宇久島らしいテーマが次々と出てきます。
祭り、方言、神楽といった文化系のテーマも挙がりました。

ほかには牛市、アスパラガスといった産業をテーマとしたものや、生徒の親や祖父母が担い手になっているテーマも挙がりました。
「この機会に話を聞いてみたい人がいる、っていう選び方でもいいよ」
「おばあちゃん。かんころ餅をつくっているんです」
「おお、じゃあヒトとモノと二つのテーマとしていけるね」
かんころ餅は宇久島だけでも複数の作り手がいるそうです。それぞれ味が違ったりと各作り手によって特徴があるとのこと。かんころ餅の特徴を比べてみるような記事に仕上げるというアイデアも出されました。

編集会議も終盤となり、熊本さんはまとめのコメントとして大事なポイントを伝えます。
「島固有の文化って口で言うのは簡単だけど、案外住んでると気づかないものだったりするんだよね。お墓参りなんかも、長崎は賑やかで東京とは全く文化がちがったりするし。一見すると大したことの無さそうなことも、案外その地域だけのトレンドがあったりするかもしれない。島のご婦人のファッションに実は特徴があったりするかもしれないしね。」
生活や暮らしそのものの中に織り込まれている魅力を発掘・再発見し、観光資源化するという考えを「生活観光」という言い方をします。
このプロジェクトの目的の一つは、自分の地域を見つめ直すことです。今後プロジェクトに取り組むにあたって、島のことを掘り下げていく際の手がかりとなる視点が示されました。

最後にこのプロジェクトのタイトルを決めてもらいました。
ワークシートに各々の案を書いてもらい、それらを総合した結果、プロジェクト名は「宇久島の未来をつくるプロジェクト」に決定しました。
次回はラフレイアウトを作成するためのワークショップです。

島という存在について考える【宇久島の未来をつくるプロジェクトvol.1】


本プロジェクトは日本財団の助成により実施している事業です。

文:
北 悟