Q.「ISHINOMAKI BIRD KIT」はもともと、石巻工房で出た端材で、子どもたちが積み木のように組み合わせて遊んでいる様子から着想したそう。端材利用をはじめとしたサステイナブルな取り組みについても教えてください。
A. 僕たちは展示会の会場構成の仕事も多いのですが、会期が終わると展示に使ったものは壊されて大量にゴミが出る。こんなに作り込んでいいんだろうか……というか、スクラップ&ビルドを繰り返すことについては、以前からずっと気になっていました。最近はクライアントから依頼されることもあって、展示会の什器はできる限り再生可能な紙で作ってしまおう!ということも多いですね。あと、「AAスツール」は天板を置くだけでテーブルにもなるので、さまざまな会場で使えます。「2017年度グッドデザイン賞受賞展」で使ったことをきっかけに、石巻工房のレンタル事業も始まりました。
福岡アジア美術館で2007年から毎年開催されている「おいでよ!絵本ミュージアム」でも2019年、2021年と会場構成を手掛けたのですが、ここでも「AAスツール」を使いました。この2019年の展示の際に使った素材のひとつが、三和化工のポリエチレンフォームの端材です。ビート板などに使われる素材ですね。『もこ もこもこ』という作品のコーナーに、この端材をカットして既成のカラーバンドで綴じただけのソファを置きました。このソファは「IFFT/インテリア ライフスタイル リビング2019」の特別展示「アップサイクルって何?」でも展示しましたが、会場に合わせて大きさも自在に変えられるし、誰でも簡単に設置できるので人気があります。三和化工では同じポリエチレンフォームをオリジナルの配色で混ぜて熱圧着した素材「カラーポリモック」の開発にも携わりましたが、こちらはまだリサイクルのポリエチレンフォームで作れていないのが課題です。
Q.これなら水場にも置けるし、ビート板に使われる素材だったら海に浮かべることもできますね。鈴野さんたちは2016年にTOTOギャラリー・間で開催された「トラフ展 インサイド・アウト」でもあらゆる素材を展示に使っていましたが、これから使ってみたい素材や、それを使って海でやってみたいことはありますか?
A. やっぱり海に流れ落ちてきているようなもの、ゴミや廃品も含めて何かやりたいなと思っています。ちょっと発想を変えるだけで急にゴミじゃなくなるようなことができたらいいなと思って。最近、建築家仲間を見ても、よりプリミティブな方に戻っている気がします。僕自身もそうですが、サウナに凝っていたり、火を熾してキャンプをしたり。両極に振らないと、心のバランスが取れなくなってきているんじゃないかな。手の復権みたいなのもあると思うけれど。そうそう、ぷかぷか浮かぶ建物みたいなものを作って、そこにサウナを設置して、暑くなったら海に飛び込むようなものが作れたらいいなといつも思っているんです。
Q. 海洋環境にアプローチするための国際的なデザイン会議が行われたら、参加してみたいと思いますか?
A. 面白そうですね。デザイナーや建築家が世界中から集まるのであれば、せっかくなら会議だけじゃなく、(人力飛行機の飛行距離を競う長寿番組)「鳥人間コンテスト」みたいな感じで、海に関わるイベントを開催するのも面白いのではないでしょうか。先ほどのポリエチレンフォームの端材や廃材などでいかだのような乗り物を作って、デザイン性とスピードの両方を競う大会も開催したら盛り上がるんじゃないかな。建築家の長坂常さんやTANKの福元成武さんたちがいろんなものでSUPみたいなことをやっていて、面白そうなんです。