レポート

香川県|香川大学附属高松小学校

香川大学附属高松小「私たちの海のおりがみ」

2022年度 成果報告

2023.06.23

学校探究学習ものづくり海洋デザイン教育

2022年度、みなとラボは香川大学附属高松小学校の児童とともに、海をテーマにした活動を展開してきました。その成果をもとに、「私たちの海のおりがみ」を制作しました。このおりがみは、日本財団が推進する海洋ごみ対策プロジェクト「海と日本プロジェクト・CHANGE FOR THE BLUE」、「瀬戸内オーシャンズX」の一環で作成・発行されたものです。

ちょうせんの時間

香川大学附属高松小では、文部科学省の研究開発の指定を受け、新たな授業をつくっています。柱になるのは、「はっけん」「ちょうせん」「じぶん」の時間です。それぞれの生活の中から知を豊かにする「はっけん」、社会とつながった体験により生き方・在り方を豊かにする「ちょうせん」、子どもたちみずからが変容し成長しながら、価値の創造を目指す「じぶん」の時間です。

みなとラボでは、この「ちょうせん」の時間のプログラムづくりのサポートと、いくつかのワークショップを実施しました。「ちょうせん」の時間は、1年生から6年生までの縦割りで取り組むテーマプロジェクト型の学習です。みなとラボは、海洋環境に取り組む白2組のみんなと活動しました。

アクアリウムをつくる

「ちょうせん」の時間は、大きなテーマが掲げられつつ、具体的に何をやっていくかは児童たちが主体的に考えていきます。「海」というテーマについて何をしたいかを児童たちが話し合う中で、アクアリウムをつくりたいとの声が高まりました。そこで、みなとラボが、四国水族館に連絡を取り、水族館についての説明や、水族館づくりについてのサポート・アドバイスをもらうこととしました。

四国水族館の協力のもとに、児童たちは小さなアクアリウムを完成。水槽の仕組みや、ろ過装置の立ち上げ作業を実施。7月4日には四国水族館を訪問し、大水槽「綿津見の景」のろ過装置を見学。その後、四国水族館から生きものをもらい受け、飼育に挑戦しました。

水槽づくりを通して、児童たちは海に暮らす生きものへの関心を高めました。海の魚たちはどういう場所に住んでいるんだろう?よく考えたら、海ってどんな場所か知らないね?ということで、少しずつ海が暮らす環境へと関心が広がっていきます。実際の海の環境について調べてみようということで、小豆島へ。

小豆島では、実際に海に行き、漁師さんたちの話を聞き、海がいまどんな状況にあるのかを調べました。海にはゴミも多くある、ということに気づいた児童たち。なぜゴミがあるんだろう?ゴミがあると、魚たちは嫌じゃないのかな?ゴミはどこからきたんだろう?という問いが深まります。

ワークショップ「これは何のカケラだろう?」

その問いを一緒に考えるため、みなとラボでは、2022年12月2日にワークショップを実施。 浜辺には「海ごみ」だけではなく、貝殻や植物の種など、さまざまなものが漂着しています。また、「海ごみ」と一言でいっても、さまざまなものが違う経路・原因で海に流れます。一つ一つの「海ごみ」が何で、なぜ・どうやってごみになったのかを考えさせ、みんなで画用紙を使って「海ごみのかたちともよう」コレクションをつくりました。

1年間の活動も終わりに近づいてきた頃、児童からは学んだことを発信したいという声が上がってきました。みなとラボのスタッフも一緒に、発信のためにどうしたらよいかをオンラインで考えました。こんな問題があるって伝えたい、魚たちも困っていると伝えたい、でも問題ばっかり伝えても嫌になっちゃうかも、楽しく伝えられないかな、どうしたらいいかな?「海ごみのかたちともよう」を使って何かをつくって、発信したらどうかな?ポスターとかどうかな?思いを伝えたいよね、何がいいんだろう、とみんなで考えました。 

みんなとの話し合いを受けて、みなとラボから「おりがみはどうだろう?」と提案しました。折り紙でつくった鶴に願いをかけるように、折り紙で船をつくって、みんなの思いを船に託して届けたらどうかな?みんなで考えた末に出てきたアイデアを実現することとしました。

ワークショップ「海への想いを届けあおう」

みんながつくった「海ごみのかたちともよう」を、デザイナーの丸山素直さんにデザインしてもらいました。児童の思いを受けたかたちで、全32種類のデザインが完成。

2023年2月14日、完成したデザインをプリントした仮の折り紙を持って、二回目のワークショップを実施しました。 1 年間の海の活動を通して、深めた海への想いを多くの人に届けるともに、いく種類もの船をつくりました。丸山素直さんには、ワークショップの講師も担当してもらいました。

授業の最後として、この船を主人公とした海の物語を創作しました。海ごみを拾いながら旅をする物語、無人島で漂着したゴミを生かしながらサバイバルする冒険譚、どこまでも広がる美しい海を渡る船。子供たちの海への想いは、オリジナルの折り紙からできた船と、船の物語へと結実しました。

みなとラボでは、折り紙を製品化し子供たちに届けました。その折り紙を通じて、子供たちの海への想いがひろがり、また異なる場所に暮らす人とつながるきっかけになればいいなと願っています。


●2022年12月2日 WS「かたちともようで、海ごみを考えよう」講師:梶川萌(みなとラボ)

●2023年2月1、14日 WS「海のものがたりを作ろう」、2月14日 WS「海への想いを届けあおう」講師:丸山素直 田口康大、小倉快子(みなとラボ)

プロジェクト監修:田口康大


このプログラムは、日本財団が推進する海洋ごみ対策プロジェクト「海と日本プロジェクト・CHANGE FOR THE BLUE」、「瀬戸内オーシャンズX」の一環で実施されました。

文:
3710Lab