海と人とのつながりをデザインはどう生み出せるのか。その具体的な提案を行うことを目指す海洋環境デザインワークショップ。その一環として、プロダクトデザイナー倉本 仁さんとともにキャンプ形式で海に向き合う「The Ocean Camping ー海から立ち上がる形ー」を9月に実施しました。参加したのは武蔵野美術大学でデザインを学ぶ6名の学生たち。鹿児島県奄美大島で2泊3日を過ごし、直接的に海を感じ、状況を知る実践形式のワークショップを行なってきました。
今年度は武蔵野美術大学での公開講座からスタート
海洋環境デザインのあり方を実践的に探り、持続可能な世界を形作る担い手の育成を目指し実施する海洋環境デザインワークショップ(助成:日本財団/海と日本2024)。多彩なデザイナーや建築家、アーティストや科学者などを講師に招き、内容は海と人とのつながりに「デザイン」がどう立ち現れるのかを探るものから、ものづくりの源流にアプローチするもの、海そのものの楽しさや魅力を引き出すものなどさまざまです。
中でもプロダクトデザイナーの倉本 仁さんと進めているのは、キャンプ形式で行われる体験重視のフィールドーワーク型ワークショップ。昨年度に続き2度目の実施となり、自然の中で自活する経験を通して、海洋環境に意識を向ける機会を創出していくことを目指すワークショップになります。
さらに今年度は現地へ向かう前に武蔵野美術大学での公開講座からワークショップをスタート。
「OCEAN BLINDESS」というキーワードとともに暮らしと海のつながりについての話を3710Lab代表の田口から、また倉本 仁さんからは昨年度の実施内容とキャンプでの過ごし方について、そして海がもつさまざまな表情や魅力、そして機能や暮らしとのつながりについて話がされました。
デザイン学科の学生たちを対象に開かれた公開講座では、実際にワークショップへ参加する学生も募集。多数の応募の中から6名の学生が選考されました。プロダクトやインテリアのデザインだけでなく、建築やコミュニティデザイン、またインタラクティブデザインまで、さまざまな視点からデザイン学ぶ学生たちが選ばれ、それぞれの海への思いも胸に奄美大島へ向かいました。
船でしか渡ることができない特別な浜辺で2泊3日のキャンプを実施
台風の影響で予定を変更し実施した今年度のワークショップですが、新しい日程も台風の影響でうねりや風が強く、昨年度実施した加計呂麻島へは渡ることができませんでした。船頭さんの計らいで今年は、奄美大島の西側、大和村の名音(なおん)漁港近くの浜にキャンプを張ることに。予定は変更となりましたが、ここも船でしか行くことができない特別な場所です。
東シナ海に向いた名音(なおん)の海は、少し泳げば、色とりどりの珊瑚とそこを泳ぐたくさんの魚に出会える自然豊かな場所です。ただ船でしか渡ることができず人の手が入っていない分、浜には流れ着いた海洋ごみがたくさん。その多くが海外から流れついたもので、一度入り江に入ってしまった海洋ごみは簡単には外に出ることはありません。キャンプを張った浜では、草木が海洋ごみを抱える姿も見ることができました。
また天候の変わりやすい夏の奄美大島では、雨が近づいてくる様子がはっきりと見えたり、水中に潜ってみると水温の違いで海水がもやもやしているように見えたり、海があるからこその自然現象も体感。
同行してくれたガイドの本田さんからは奄美大島の自然について、また歴史や文化についての話も伺い、海に対するさまざまな視点を獲得することができました。
フィールドリサーチを経て制作活動へ 成果報告は冬を予定
漂着物のリサーチを行なったり、竿や銛を片手に海に入り魚たちを追いかけたり、珊瑚の様子を観察したり、奄美大島の海や自然を存分に味わった参加学生たち。滞在中の活動での気づきや発見を話し合ったりと、各自が持つ海への想いも共有しました。
悪天候な日もありハードながらも充実した2泊3日を経て、ここからは東京に戻って製作活動がスタート。奄美大島で得た特別な体験や新たな気づき、視点がどう立ち現れてくるのか。彼らのアウトプットはこの冬に報告予定です。
海洋環境デザインワークショップ
「The Ocean Camping ー海から立ち上がる形」
実施者 倉本 仁
参加者 川合沙羅
小林柚花
下田琴水
新郷愛奈
陳 柔伊
中村栞菜
主催 みなとラボ
協力 武蔵野美術大学
助成 日本財団 海と日本プロジェクト2024