レポート

気仙沼市立幼稚園「海洋教育こどもサミットin小泉海岸」【イベント紹介映像】

2022.10.20

学校イベント海洋教育

「海洋教育こどもサミット」を、幼稚園で

「気仙沼市の幼稚園が集まって、地元の海岸で年長さんたちの“海洋教育こどもサミットin小泉海岸”をします」——こんなニュースがみなとラボへ届いたのは、2022年5月のことでした。気仙沼市では昨年度も4つの幼稚園が合同で「海洋教育こどもサミット(幼稚園)」を実施しており、今回は2回目にあたるもの。昨年度より参加園が1園増え、5つの市立幼稚園の年長児たちが、2022年6月1日、小泉海岸に集まりました。

宮城県北部・気仙沼市の入り組んだ海岸線のなかでも、小泉海岸では広い浜と遠浅の海、穏やかな波の姿が見られます。そんな小泉海岸で、年長児たちはどんなひらめき・遊びのかたちを見つけ出したのでしょうか。また幼稚園での海洋教育とはどのように進められるのでしょうか。当日の参加者の様子、企画者の教職員たちの視点などを、ダイジェストムービーでぜひご覧ください。 

海の体験は仲間との出会いの場

動画でも語られますが、幼稚園児たちの合同海体験は、様々なカリキュラム的な工夫によって実現したもの。ここでは2つのポイントをご紹介します。
1つめのポイントは、当日を迎えるまでに、各園の年長児同士がオンラインでの交流を重ねてきたということ。実際、「別の園のあの子と遊びたい」という期待の声が多数聞かれました。人が集い、自由に遊びを作り出す場として、小泉海岸の海は人を結ぶ場でもあったようです。
特に、小泉海岸の海を体験してきた小泉幼稚園の園児は、他の幼稚園からの「仲間」を迎えるという立場でもあります。自地域の海で自分たちが発見した面白さを「仲間」に知らせ、紹介しようとする園児の心的な構えは、リアルな場所に集まるからこそ生まれるもの。そうしたリアルな場としての海の価値を引き出すことに、ICTツールでの事前交流が効果的だったのかもしれません。

海の体験を重ねることで見えるもの?

2つめのポイントは、各園でもそれぞれ自地域の海体験を実施してきたということ。文脈があるからこそ、自地域の海と小泉海岸との違いを楽しみ、発見した園児も多かったようです。たとえば地元の海が岩場の海なら、小泉海岸は砂浜。実際、砂の特性や造形的な自由さに注目した遊びが多く見られました。
さらに、波打ち際で砂を掘ると何が起こるか、湿って傾斜のある砂地でどんな遊びを創り出そうか。砂地にすむ生き物たちや波の形と力強さに興味を示す園児もいました。それぞれの地域で「海」と重ねた出会いがあるからこそ、遊びも発見もいっそう個性豊かになったのかもしれません。

幼稚園での海洋教育の可能性

2021年、気仙沼市の公立幼稚園・小・中学校は、海とともに生きる気仙沼の人々にとって大切だと考えられる力や態度、問い、視点を「海洋リテラシーfor気仙沼」(※1)として整理しました。これは、大人もこどもも参加できる、「海と生きるってなんだろう?」という問いの出発点として生まれたものです。幼稚園サミットは、園児が「海と生きる」とは何だろうという問いを考えさせる魅力的な試みであり、同時に、海と人とのかかわりが持つ可能性を改めて示すものでもあったのではないでしょうか。

小泉海岸から帰園した年長児たちは、早速、同じ園の年中・年少子へ小泉海岸のことを伝えたそうです。海に集った仲間たちとの交流をさらに楽しみにしながら、海体験に着想を得た遊びを作り出している園もあるとか。一人一人が「面白い」「楽しい」「不思議だ」と感じる海の一面を、消さず、急かさず、誘い出す、幼稚園ならではの海洋教育の姿を感じさせる後日談です。

※1 「海洋リテラシーfor気仙沼」については、気仙沼市のHPをご覧ください。

【幼稚園サミット】
実施:気仙沼市立唐桑幼稚園、松圃幼稚園、大谷幼稚園、津谷幼稚園、小泉幼稚園
協力:気仙沼市教育委員会 気仙沼市保健福祉部子ども家庭課
実施助成:海洋教育パイオニアスクールプログラム

【ダイジェストムービー】
制作:PETRA(福原悠介)
企画・製作:一般社団法人3710Lab
製作助成:日本財団