2024年3月にみなとラボ出版から刊行した『個人書店が選ぶ、いま読んでほしい 海の本』。漁師町の書店、海がない土地の店主、瀬戸内海や沖縄の海を望む書店など、全国37の書店主が海に関する選書をし、140点以上の書籍と店主によるコメントが集まりました。直接海に行くだけでなく、海に出会える場。本屋は、そんな海への入口を担ってくれると感じています。
海と人がどう関わっていくのか。大きくも自分にとって関係のあるその問いを手繰り寄せるためには、いままで意識していなかった人たちの目を海に向けてもらう必要があります。このフェアを通し、自分にとっての海への興味関心事を見つけ、育み、深めるきっかけになれば嬉しく思います。その本を携え、全国へみなとラボも出航です!キャラバン第三弾は、兵庫県朝来市にある「本は人生のおやつです!!」(通称:本おや)で実施。『個人書店が選ぶ、いま読んでほしい 海の本』の中からや、本おや店主の坂上さんセレクトの海の本を加えた特別コーナーを展開していただきました。
会場・会期
『個人書店が選ぶ、いま読んでほしい 海の本』 出版記念キャラバン「本屋は海の入口」 第三弾 本は人生のおやつです!!(兵庫)
日時:2024年7月27日(土)〜8月27日(日) 会場:本は人生のおやつです!!(兵庫県朝来市山東町矢名瀬町689)
はじまり
本は人生のおやつです!!(通称:本おや)の店主・坂上さんは、「Read the Sea 」で選書していただいたときから、とても熱量を込めて本をご紹介くださりました。ついついその本を読みたくなり、普段はあまり手にしない海外文学や冒険小説を読んでみたりと、スタッフ自身があらたな海と出会うことができました。そんな坂上さんが、『個人書店が選ぶ、いま読んでほしい 海の本 』の中で他の店主さんが選んでいる自身も好きな本や、新たに選書した海の本を集めたフェアを展開してくれました。さらに、みなとラボの活動を紹介するコーナーも展示。
坂上さんが今の店舗へ移転する前(大阪時代)から10数年ずっと売り続けている『海に住む少女』シュペルヴィエル(光文社)は、坂上さんにとって、とても思い入れがあることがわかりました。そこで今回は、『海に住む少女』シュペルヴィエル(光文社)の翻訳者、永田千奈さんをゲストにお迎えし、トークイベントも開催しました。
展示風景
古書と新刊が並ぶ古民家の店内。真ん中には印象的な棚が目をひきます。そこに大きく展開いただいた海の本コーナー。みなとラボの書籍と坂上さんが選んだ海に関する本が並びました。
イベント
トークイベント「翻訳者・永田千奈さんに聞く!「海に住む少女」の魅力」
シュペルヴィエルの短篇集『海に住む少女』(光文社古典新訳文庫)を翻訳された永田千奈さん。シュペルヴィエルの生い立ちや泳げないこと、ふたつの住処を移動するのに1ヶ月くらい船に乗っていたこと、生と死、都会と田舎など矛盾したものをもっている背景などを持っているからこそ、そのどちらでもないものや、どこにも属していないものなどをあらわすことができたのではというお話は、シュペルヴィエルが海や波を度々物語に登場させている一端のように感じました。また、永田さんが訳されるとき、「原文に忠実ではなく誠実であろうとした」とおっしゃっていて原文のもつ魅力を訳者の方々が引き出しているのだなと。その解釈も人それぞれで、訳者によってタイトルの表現も異なることを資料とともに教えてくださいました。
そして、今回特別に詩集『世界の寓話』に所収されている海に関する詩を朗読してくださいました!原文はイベントに参加してくださったフランス人の方に。日本語訳を永田さんという贅沢な時間でした。そのほかにも、永田さんにとっての海の本をお聞きしたり、会場からの質問にお答えいただいたり、あっという間の1時間半となりました。